―副題 B 《露営(野宿)のすすめー楽しみ方》
・ 距離的にどのくらいの日数で縦走踏破できるのか
・ またその期間中の露営(野宿)はどうあるべきか
・ 食糧・飲料水などの携行品の研究と実験
・ その縦走期間中の健康状態などの観察の場
として最適であると判断し、高島トレイルを選択した。
ただ標高3000m級の峻厳な阿羅漢山脈越えと、標高1000mに届かない高島トレイルの低山縦走と
は質的に、物理的にも比較にはなりえないことは承知してる。
その肉体的・精神的格差をすこしでも縮めておくため、この夏に「立山連峰縦走」(標高3000m級・
を実施し補った。
1) 総距離を重要視 <約80km>
<インパール⇒カレーミョ約100kmの内、白骨街道 約80km>
<中央分水嶺・高島トレイル・国境スキー場⇒桑原橋, 約80km>
2) 山岳地帯での実体験の必要性
3000m級の急峻なる連峰であり、食糧もなく雨季以外は乾燥し飲み水が乏しい。
撤退時のアラカン山脈撤退路・白骨街道は5月から始まる雨季にぶちあたり、バケツをひっくり返し
たような猛烈な雨が降ったと九死を乗り越えた生存者は証言している。
たといわれる。
された。
標高700~900mの連山に過ぎないし、それも大きく3つの峠で生活道路である県道や林道に出る。
ただ食糧となるものは茸、栃の実、苔以外に見当たらない。
飲料水となる谷水、池、水たまりが極端に少ない。
食糧、飲料水は基本として背負っての縦走となる。
重くても基本的に自分の命(水)を背負うこととなる。
わが命の重さが決まるのである。真剣に、慎重にならざるをえなかった。
山岳縦走における露営体験・訓練としては最適なトレイルと判断した。
2. 露営(野宿)訓練
今回の「高島トレイル」80キロでは、野宿・露営の技術・装備にも力点を置いた。
本当はテントを持参したかったが、携行総重量(15kg)を考えただけで断念せざるをえなかった。
テント(1400g)の代りに下の写真のようなツエルト(170g-簡易露営覆い)を持参した。
今回使用した<ツエルト・セット>を紹介しておく。
1) ツエルト・セットの紹介 (簡易テントとして露営・野宿に使用)
・ 『エマージェンシーシェルター』 <防水・断熱・奥行き2.4m / 160g> 510円
ロープ付三角筒状の市販のものを使用・アマゾン通販にて購入
・ 『厚手ナイロン・ゴミ袋』<防湿・防水・180x100cm / 80g> 家庭用
表土からの湿気や雨水の流入を防ぐシートとして使用
・ 『非常用アルミシート』 <防寒・非常用プルオーバー / 128g 120x250cm>
ツエルト(簡易テント)内の床シートとして使用
撤収時の収納時間短縮に重宝 (寝袋はじめすべての寝具品をそのまま引っ張り出して
収納作業可能)
エマージェンシー・シェルター
<今回使用した簡易テント(ツエルト)「エマージェンシー・シェルター」の素晴らしさを紹介しておく>
・ 超軽量という物理的すぐれものだけでなく、夜間の自然観察用ツールとして重宝した
・ このシェルターに寝ころぶと深夜の世界をじかに観察できるのだ
・ シェルターの素材がすばらしい 外の世界からは中が見えないが中からは外が見えるという
マジックミラー的観察が可能である。
・ 風の動きや・峰々のシルエットや・朝夕の風景を観察できる喜びを与えてくれた
・ まるでプラネタリウムというか宇宙を覗いている自分に興奮したものである
2) ツエルト(簡易テント)設営・撤収
ここでは夜露を防ぐ露営・野宿・緊急用簡易テントのことを「ツエルト」または「シェルター」と
呼ぶ。
<ツエルト設営の方法・手順>
・ 高島トレイル縦走における設営は、基本的に予定区間ルート縦走終了時間の15:00に開始された。
・ ほとんどの場合、露営(設営)地選定のため20~30分は超過する。 それだけ設営地選定は最重要事項の一つである。
・ もちろん到着予定1時間前の14:00頃から知らずの内にその日の仮の宿である設営地を物色することになる。
・ だからその日の縦走終了時間や到達地点付近に見つからない場合は適地まで戻ることもある。
・ 設営地に到着し、リュックをおろしたらまず第一にやらなければならない夕飯の準備に着手した。
・ 献立にしたがい、本日のメニューに仕分けられた袋に水を注ぎ、設営完了後に食べられるようにしておくのである。
<簡易テント(ツエルト) 設営の条件>
・ まず平地であること
・ 山岳地帯、それも尾根近くにあっては平地がそうあるものではないので根気よく探すことになる
・ 傾斜のある窪地は雨水の流入をまねくので避けること
・ 片側に遮蔽物(林やブッシュ)があれば防風、安眠につながる
・ 傾斜地では体重移動がむつかしく、寝心地がわるい
また自分だけの宇宙空間、手を伸ばすだけであるべき小物の位置が動くので居住性に欠ける
宇宙船内と同じく心地よさが求められる
・ 葉の茂った樹木の下を選ぶこと
簡易テントを夜露から守ってくれる
夜露をさけ、撤収作業を容易にするため(タオルで夜露をふき取ることもあった)
濡れた簡易テントの重さを減らすため
樹木を簡易テント(ツエルト)のロープの支柱として利用するため
・ 風の方向に対し直角に交わるように設営する
使用した簡易テント(ツエルト)は両側がオープンであり、風の通り道となっては体温を
奪われる
・ もちろん風向と直角に交わる簡易テントは風により騒音をだすことになる
この騒音を野生動物、とくに熊に対する防御(警告)音とした
静寂の中で露営するのは思索にふけることができ好きであるが、風のつくりだす音もまた
心地よいものだ
・ 風の強弱・風向きで天候の推移を知ることができる
風のある夜は夜露の量がへり、夜露が天幕につかないので助かる
<簡易テント(ツエルト)の設営の仕方>
・ 設営地を決定したら、まず全体の地形にあわせグランドシート(開封した厚手大型ゴミ袋)
で位置を決める
・ 樹木の立地・風向き・雨水の流れ込み予想・星空観察の空間・縦走路との位置関係・方位を確認する
・ 簡易テント(ツエルト)をひろげ、二本の支柱樹にロープを <ちぢめ結び・巻き結びなど>で固定する
・ 次に側壁に取り付けた左右のロープを<てこ結びや巻き結びなど>で枝片にくくり、土に突き刺して固定する
・ 簡易テントのサイドを両側に引っ張ることにより住空間はぐっと広がるとともに、4カ所固定により強度が増す
・ ロープ4本により風圧・弛みの調整をおこない設営は完了する
簡易テント設営後、ツエルトに潜り込む前に軽く柔軟体操をおこない、
今日一日の疲れや筋肉をほぐすことで快眠がえられることを申し添えたい 。
<簡易テント(ツエルト)での過ごし方や熊除け対策>
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設営後、テント内に防湿・防寒用NASAご用達のアルミシートをひく
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その上にエアーマット(膨張率60%-わたしにとって一番寝心地がいい膨らみ)を敷く半身用エアーマット(重量の関係上、肩から尻までをカバーするマット)を使用している
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空気枕を膨らませ、スリーピングバックにゴアテックス製寝袋カバーを取り付ける
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<熊除け対策として >簡易テントの入口側のロープに熊除けの鈴を取り付け食糧や行動食・非常食は袋に入れ簡易テントより約100m離れた枝に吊るした熊対策は、カナダ・アラスカを流れるユーコン川280キロを一週間かけてカヌーで下った時の経験を踏襲した簡易テント入口の鈴はテント内をはしるメインロープに取り付けられ、寝袋の中からでも腕を伸ばしてこのロープを引っ張ればけた激しく鈴がなるのでとても有効であるまた自分の存在や位置情報を相手である夜行性の熊や鹿、イノシシに正確に伝える必要がある野生動物との不必要な争いを未然に防ぐ方法を講じておくべきであるその目的は野生動物の世界に居候させてもらっている人間側のマナーであり愛情でもある
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設営のこの辺りで半時間がすぎ、夕食の準備が出来上がっている今夜の夜空や夜行性動物の過ごし方や虫たちの大合唱、夜空の大星軍のパレードや風たちの日本列島横断の様子を観察・観賞しながら夕食をとる縦走の1日を終え、仮の宿もでき食事にありつけるいちばんホッと安堵するひとときである
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夕食をしながら今日のルート難易度・所要時間のチェックと記録作成・反省点の書き出しを行う望天観察より明日の天気を読み、今夜の星空・降露・風向を予想する
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夕食と記録整理をおえるころ、西の稜線や小浜の水平線・日本海に夕日が厳かにそしてロマンチックに沈みゆくときどき今夜の棲み家の位置情報と「今夜はよろしく」とのシグナル(鈴)を鳴らして先住のみなさま(夜行性動物)にごあいさつを送る遠くで鹿の家族が鳴きシグナルを送り合い自分の居所や安全であることを確認するのだ「今夜はお客様が来られているようだから騒がないように」と伝えあっている
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まわりが暗闇に包まれ、森本来の世界に変わりつつある夕方6時ごろ、わたしも寝袋に入る時間であるまず、汗をかいた行動用Tシャツと靴下を予備のTシャツと靴下に取り替え、行動用Tシャツと靴下を簡易テント内のロープに吊るし乾かす
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長袖シャツ・防寒用ジャケット、さらに軽量ダウンジャケットの上下を重ね着のうえ寝袋に入る枕元のまわりにライト・ラジオ・ポーチ・水・非常用小便袋・野生動物撃退用としてのストックを配置する
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最後にリュックカバーを付けたリュックを足元の風雨塞ぎに立てかけるときどきロープを引っ張って鈴を鳴らし、野生動物である先住民に所在地と宿泊している旨のシグナルを送る就寝前の小用を足しに、また不測の事態(防雨風によるテントの破壊・動物の襲撃)に備えての 避難経路の確認のため寝袋を抜け、登山靴をひっかけ外に出てみる
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遠くに漁火(いさり火)のかがやく若狭の海やびわ湖岸の長浜の灯火がダイヤモンドのように輝いて いる, 夜景に出くわし胸がおどる時間でもある
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就寝準備完了(キューピーコーワ2錠)を口に放り込む・口の渇きをふせぐために、ガムをかみ、水をふくむ・蛭や虫の体への侵入をふせぐためタオルを首に巻くネットつきテントではないので虫たちの往来訪問は自由であるお蔭で虫たちの訪問を受け一緒に寝たようだ縦走中、その噛みつきの痒みに悲鳴をあげたほどである(帰宅した2週間後のいま、噛みつき跡が熟し痒みのピークを迎えている)・ラジオで明日の天気予報を聴くが、近くの日本語放送よりもお隣の国であるハングルやチャイニーズ放送が幅を利かせている・今日の出来事をヘッドランプのもと記録ノートに書きのこす・あれこれごそごそと宇宙船内でやっていると夜7時になる・喉(のど)を通過するとき、混合液は異常な刺激を与えてくれる、焼けるようだ。
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深夜目覚めるとき・この縦走中の露営では、規則正しく深夜0時半ごろに目が覚めた 6時間後の一服の目覚めである・いや、縦走野宿だけに与えられる貴重な時間なのである・まず、寝袋より抜け出す順序を覚えておかないと寝袋に戻れないので、目をさまし慎重に手順を頭に叩き込み抜け出る・枕にしていた登山靴を簡易テントの出入り口にそろえ、体をくねらせて寝袋より出て老体を持ち上げて靴に立ちあがる、大変な作業である
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・その瞬間、森の暗闇の世界にいる自分を知り、駆け抜ける風と寒さを感じる、近くでうごめく動物
たちの息吹を感じる、暗黒の空にきらめく星の王子様や星の女王様が語りかけてくる
・ ライトに照らされて大慌ての虫どもが頭隠して尻隠さずのポーズをとる、
なんと幽玄に満ちたる世界か、わたしが宇宙人になる瞬間でもある
・ 深夜の儀式をおえると簡易テント(ツエルト)の寝袋への帰還である
これがまた大変な仕事である、手順通り寝袋に戻らなければ後半の就寝に入れないのだ
・ 寝袋への帰還後、「詩・ああわれいま」を書き上げるのもこの深夜の時間である
ライトに浮かび上がる白いページにこころの直観を書き綴っていく
そう、宇宙にいる自分のいまの心情を書き残すのだ
・ やはり怪しげな液体を含み、水を流し込んで就寝後半に入る
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《中央分水嶺 高島トレイル ぶらぶら老人縦走日記 》
野帳とスケッチ一部抜粋
左より「高島トレイル野帳」・「ガイドブック」・「高島トレイル詳細マップ」
「高島トレイル行程図」 全行程80km 6泊7日の概略図(野帳より)
「高島トレイル縦走高低図」 アップ&ダウンの起伏に富む変化豊かなトレイルである
高島トレイル唯一の岩稜・明王の禿 (はげ 2015/10/3 2:27pm)
駒ケ岳より三重嶽・武奈ケ嶽(高島トレイル縦走路)を振りかえる (2015/10/7 1:48pm)
高島トレイル縦走路 根来坂峠展望台より日本海小浜湾を望む (2015/10/8 12:55am)
左より 釣瓶岳・蓬莱山・武奈ケ岳 (おにゅう峠より比良連峰を望む 2015/10/8 1:30pm )
<武奈と蓬莱の記名を逆にしている・ 右端にこれから向かう三国岳が見える>
へ続く