出会った。
彼は定年を迎えてのあとの毎日の生活に変化と生きがいを求めて走っているとのことである。
本人は「時間つぶしです」と言われるが、そのランニングの速さは中途半端でなく、自転車のわたし
でさえその対抗者(競争相手)ではなかった。
ランニングに抜かれる自転車、脅威のライバルに目をみはったものである。
この庄野宿でも、黑一色のハット、シャツ、ショートパンツ、ソックス、トレッキングシューズ、リュック
ぞれの想いやファッション、夢や希望・苦難や宿命を背負って歩いている姿は昔も今も変わることがないようである。
左・亀山宿より庄野宿に向かう途中JR井田川駅前で出会った旅人(写真左端)
右・旧東海道庄野宿の街並み、連子格子の旅籠が並ぶ穏やかな宿場である
庄野宿資料館(市指定建造物 旧小林邸住宅)
■44 石薬師宿
出る。橋手前の線路寄り(南側)に「石薬師一里塚」がある。
石薬師宿は規模の小さい宿場である。見るべき宿場跡は小沢本陣跡を示す石柱碑があるのみ
である。
この石薬師一里塚跡と小沢本陣跡が唯一「石薬師宿跡」の歴史を伝えているように見える。
石薬師は、宿場の南はずれにある石薬師寺の門前に開けた町で、街道でも最も小さい宿場の
一つだった。
<■石薬師一里塚> 京より23里92km/日本橋より102里408km
「石薬師の一里塚は,もと蒲川の西岸に位置し,かつては東海道の両側に榎が植えられていた。
記録によると,榎は伊勢湾台風で折れ,終戦後北側にその根元だけが残っていたという。
しかしその後消滅してしまったので,昭和52年に南側に榎の若木を植え,『史跡石薬師の一里塚跡』の碑を
建てて保存が図られている。」 (案内板より)
「石薬師宿」であることを示す宿場表示板 案内板
「佐々木信綱資料館」
明治の歌人で、万葉研究で知られた国文学者の佐々木信綱の生家で、隣に「佐々木信綱資料館」がある。
蒲桜の近くに佐々木信綱の歌碑がある。
『 ますらをの その名とどむる 蒲さくら 更にかをらむ 八千年の春に 』 (佐々木信綱)
佐々木信綱資料館より北へ100mほどすすむと、往時の威風をを漂わせた、ひときわ大きな古い
建物がある。これが小沢本陣跡である。宿帳には、大岡越前守の名もある。
<小澤本陣跡>
案内板によると
泊まるところを本陣といい、小澤家が本陣を勤めていた。石薬師宿は小高い台地にあり小澤本陣の周りには高い松の木があったので、別名『松本陣』ともいわれていたという。小澤家には当時の文書が多く残されおり元禄時代の宿帳には赤穂の城主浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)の名も見える。」
いよいよ二日目の露営地「四日市宿」に入る。
■43 四日市宿
旅人でにぎわったとある。
天然の良港によって回船業が発達し、市場が出来る。四のつく日に市がたったことに由来し「四日市」と
呼ばれた。
行う役所)が置かれていた。
立つ。
(現在の三滝川を画いたと言われている)
杖衝坂にある芭蕉句碑
采女一里塚のある国道1号線を右に入り、旧東海道を行けば、杖衝坂の上りになる。杖衝坂(つえつきさか)は日本武尊の故事が伝わる急勾配の坂道。日本武尊は東国を平定しての帰途、伊吹山の神と戦い傷ついたことで病に倒れ、その弱り切った身体をおして大和帰還を目指す。この急坂に差し掛かったところで、剣を杖代わりにして何とか坂を登りきったという。東海道の旅人を恐れさせた急坂である。
貞享4年(1687)、芭蕉は江戸から伊賀に帰る途中、急な坂のため落馬したという。そのときに詠んだ季語の
ない有名な句がある。
「歩行(かち)ならば杖つき坂を落馬かな」 (芭蕉)
わたしも、昔の旅人を偲び自転車をおり、押してのぼった。もちろん自転車から落ちないためにだ。
高校生たちは立ち漕ぎでその若さを発露していたし、幼児を前後に乗せて一気にかける若き母たちの電動自転車に圧倒された。時代の流れにわが歳は乗り遅れているようでもあり、わが残り火の青春を楽しんでもいるようだ。
歩きも実にいい、時や歴史を共有している安心感と満足感がある。
おきたい。当時すなわち江戸時代の東海道の旅の実状をうかがい知ることができるからである。実にのんびり
した良き時代を旅していたことがわかる。
◎弥次喜多話
四日市宿の旅籠に泊まった弥次さん、喜多さんは、ここお伊勢さんとの分岐にあたる追分にある茶屋に立寄った。この茶屋には名物の饅頭があったそうな。先客の半天をひっかけた金毘羅参りの男と出会う。大食いには自信のあった弥次さんは、大食い競争で饅頭代をうかせる魂胆から金毘羅参りの男に一つの提案をする。「饅頭をどの位食えるか」賭けをしようとの話になった。しかし競争に負けた後あと、相手は大津の釜七と言うえらい手品使いであることを駕籠かきから知らされる。勝てるはずもない。まんまと233文を逆に失うのである。
弥次さんはいっぱいはめられたというか、おのれの自惚れに敗れるのである。
もうすぐ二日目の露営予定地の諏訪神社横の公園だ。
あと一息ペダルをこぐ。
■ 43四日市宿ー2 につづく