■<潜伏キリシタンの里探訪 自転車の旅630km 13日目-①> 2018年9月13日
― 平戸・田平漁港 ⇒ 平戸旧城下町― 走行距離 9 km
平戸・田平港の東にある大崎鼻から朝焼けがひろがって行く。田平港を見下ろす妙心寺派是心禅寺からの鐘の音が平戸の空に響き渡る。
この平戸の地が、長崎の出島に移る前の、この国と世界を結ぶ唯一つの門戸であった。
夜半に襲われた大雨で湿ったテントをたたみ、田平港に面した県道230号を北へ200m先を左折すると、サムソン・ホテルの後方、海ぎわに焼罪史跡公園があり、カミロ・コンスタンツォ神父の殉教の碑が建つ。
妙心寺派是心禅寺の鐘の音は平戸港全域に響く
<焼罪史跡公園―カミロ・コンスタンツォ神父殉教の碑>
1603年インドに出発し、1605年着いた。1622年宇久島で捕縛され、田平のこの地で火刑に処された。
50年の生涯を神に捧げた。
「カミロ神父は、神の助けによって恐れることなく、自分の命を神に捧げるよろこびに瞳を輝かせ『すべての民よ、神をたたえよ』と詠い、『聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな・・・』と5回祈って、すべての人の父のふところへ帰天した。」 (碑文より一部抜粋)
平戸を見下ろす焼罪史跡公園に建つカミロ神父殉教の碑
<田平天主堂>
焼罪史跡公園をあとにして、平戸大橋の東端から国道204号線に入り、400m先の県道221号線を南下、1.5km先に墓地をかかえ、重厚な煉瓦造りの田平天主堂が、平戸瀬戸を見下ろす高台にそびえ建っている。
田平天主堂正面
田平天主堂側面
<平戸大橋を渡り、大橋公園で天日干し休憩>
吊橋を渡りきると平戸大橋公園がある。まずはここで、快適な睡眠を維持するため、昨夜の大雨で濡れたテントや寝袋などを乾燥させることにした。
美しいカーブを描く吊橋・平戸大橋
平戸大橋公園で天日干し
<世界への門戸であった平戸の街>
殉教と聖地としての 平戸
戸城より平戸の港町を見下ろす(右端がオランダ商館跡)
バプチスタ神父はフィリピン総督の使節として1593年頃、平戸に渡来した。名護屋で豊臣秀吉に謁見し、日本で最初にフランシスコ会として布教を認められて、秀吉から与えられた土地に教会や病院を建てたが、サン・フェリーぺ号事件がおきて、京都で捕えられ、1597年、長崎・西坂で殉教した26聖人のひとりとなる。
サン・フェリーペ号事件とは、1596(文禄5)年に起こった。日本の土佐の国にスペインのサン・フェリーペ号が漂着、その乗組員の発言が大問題となって、豊臣秀吉のキリスト教徒への直接的迫害となり、長崎での日本二十六聖人殉教のきっかけとなったとされる事件をいう。
言ってみれば、西欧による日本の植民地化を恐れた為政者によるカトリック布教禁止のきっかけとなった。
その発言とは、サン・フェリーぺ号が土佐に漂着難破したとき、奉行として取り調べた増田長盛が秀吉に提出した乗組員の発言をまとめた「スペイン人たちは海賊であり、ペルー、メキシコ、フィリピンを武力制圧したように日本でもそれを行うため、測量に来たに違いない。このことは都にいる3名のポルトガル人ほか数名に聞いた」という書状にあった。
聖ペドロ・バプチスタ神父平戸上陸記念碑
<オランダ商館跡>
その翌年、1641年5月には、商館は長崎出島へ移転することになり、33年間の平戸オランダ商館の歴史に幕が下ろされた。
この時代は、江戸時代初期の国際貿易、キリスト教の布教・禁教など、わが国の対外政策の歴史を考える上でも重要な時期にあたる。
復元されたオランダ商館
オランダ商館跡の遺構
<平戸旧城下町を往く>
平戸旧城下町(英国商館通り)を自転車で走ると、いたるところに歴史を物語る西欧の飾りつけが目に飛び込んでくる。
平戸には、潜伏キリシタンの伝統を感じる世界遺産があり、オランダとの交流の先駆となった異国情緒漂う城下町であり、歴史ある美しい教会が建つキリシタン布教の地である。ゆっくりと自転車を押して散策を楽しんだ。
平戸・英国商館通り
旧平戸城下街では多くの異国情緒に出会う
<平戸・港町の歴史>
平戸の街は、夕焼けに浮かび、朝焼けに輝く平戸城が見下ろす港に面して広がっている。
平戸地方は800年にわたって、もっとも重要な日本の対外航路「大洋路」の中継地であった。この航路は8世紀のはじめ、遣唐使船の航路として開かれ、以降、唐や宋の商船の博多と中国の寧波の定期航路となっている。
1550(天文19)年ポルトガル船が貿易活動の盛んであった平戸に初入港、以降、オランダ・イギリス貿易まで繁栄を享受するが、1641(寛永18)年幕府の対外政策のもとオランダ商館を長崎の出島に移したことにより平戸の港町としての繁栄と歴史は終息した。
1550年平戸に入港したポルトガル船
潜伏キリシタンの里探訪 自転車の旅630km 13日目-②
2018年9月13日 ― 平戸旧城下町 ⇒ 生月町博物館
につづく