『星の巡礼 朋友 竹内正照君を偲ぶ追悼短歌集』
2019年11月14日 午後8時永眠帰天す
2020年11月14日 一周忌を偲ぶ
短歌 『偲ぶ草』
詠み人 後藤實久
この短歌集は、晩年、京瑠璃玉(トンボ玉)に情熱を傾けた朋友 竹内正照君(号 琥衆)の治療入院を励ますための愛語と、帰天した朋友への哀惜の念を綴ったものである。
彼との出会いは京都における高校時代のボーイスカウト活動を通してであった。大学に進み、彼をはじめ7人と共に発起人となって同志社大学ローバースカウト(青年)隊を結成させた仲である。
すでに半世紀を越える友情を重ねているが、彼は手広く飲食業を経営しながら、ボーイスカウト活動をはじめ、朝日カルチャ―スクールのキャンプインストラクチャーとして活躍、京都キャンプ協会でも奉仕していた。
彼は人生半ば、一念発起し、趣味のトンボ玉から京瑠璃玉へと境地を広げ、琥衆の号のもとに高島屋工芸展を通して多くの同好の士の魂を揺さぶる作品を世に出した。
晩年、彼は京瑠璃玉を天職として愛し、全精力をつぎ込んでの取り組みをしていた。友人としてその完成を心待ちにしていたが、琥衆としての京瑠璃玉完成と共に天に召された。
病床にある彼を見舞って交わした愛語は、いついつまでも忘れることのできない宝であり、思い出となった。
彼が入院する数か月前には、有志の夫婦で「青春(あおはる)会」の名のもと思い出の食べ歩き会を持てたことがせめての絆の証となった。
■君を見舞いて
《見舞いゆき 勝負魂 こころ失せ 連敗せしや へぼ将棋かな》
-みまいゆき しょうぶだまし こころうせ れんぱいせしや へぼしょうぎー
(へぼ将棋に勝っての得意顔、嬉しいね、その童心の顔がいい)
《夏休み ロボット残し 孫帰り 君と将棋 指すを楽しむ》
-なつやすみ ろぼっとのこし まごかえり きみとしょうぎ さすをたのしむー
《声明の ツクツクボウシ せわしきや 清けき老いを 楽しむもよし》
-しょうみょうの つくつくぼうし せわしきや きよけきおいを たのしむもよしー
(運命に従うツクツクボウシの声は、清く透明な声明に聞こえてきて、その老いを
楽しむ姿に感銘を受けるものである)
《清らかに 湖岸風切る 湖西線 列車乗れば 君に会えしや》
-きよらかに こがんかぜきる こせいせん れっしゃのれば きみにあえしやー
(われらが利用する琵琶湖西岸を走るJR湖西線の列車)
《山百合の 清き姿や 凛と立ち 時を見つめて 風に揺れにし》
-やまゆりの きよきすがたや りんとたち ときおみつめて かぜにゆれにしー
《情熱の いのち顔色 吉野葛 君や輝く 京瑠璃玉や》
-じょうねつの いのちかおいろ よしのくず きみやかがやく きょうるりたまやー
《ダンディな 君も今乗る 車椅子 友情架けし 近江大橋》
-だんでぃな きみもいまのる くるまいす ゆうじょうかけし あうみおおはしー
(9月度<青春会>定例昼会食・ドイツレストラン・大津市近江大橋で開催)
《秋風に 寄添うススキ 触れあいて 振り返りし日を クスッと笑う》
-あきかぜに よりそうすすき ふれあいて ふりかえりしひを クスっとわらうー
《琵琶に咲く 曼珠沙華 背を伸ばし 天上の華 たらんと欲す》
-びわにさく まんじゅしゃげ せをのばしてんじょうのはな たらんとほっすー
(君もまた、びわ湖に咲くトンボ玉の花たらんと望みしや)
《人の道 その時なきて 今は無し 水の流れに 己まかせし》
-ひとのみち そのときなきて いまはなし みずのながれに おのれまかせしー
<岩もあり 木の根もあれど さらさらと たださらさらと 水は流れる> 作者不詳
《君恋し 男心を 燃えしひと 友情の花 咲きて乱るる》
-きみこいし おとこごころを もえしひと ゆうじょうのはな さきてみだるるー
病床に野道で摘みし萩の花を届ける
《秋風に 一瞬ひやり 鳥肌の 気づきに感謝 今朝の一歩や》
-あきかぜに いっしゅんひやり とりはだの きづきにかんしゃ けさのいっぽやー
《導かれ 雑草の中 我らおり 共に祈るや 生きる喜び》
-みちびかれ ざっそうのなか われらおり ともにいのるや いきるよろこびー
《栄光の 勲章さげし 老兵の 遠き夕日に 喇叭吹きしや》
ーえいこうの くんしょうさげし ろうへいの とおきゆうひに らっぱふきしやー
《燃え尽きて この身捧げし とんぼ玉 光と遊び 露に宿るや》
-もえつきて このみささげし とんぼたま ひかりとあそびし つゆにあそぶやー
琥衆作 京瑠璃玉(トンボ玉)
《台風の 停電闇夜 慌ててや スイッチぱちぱち あれ点かんがな》
ーたいふうのていでんやみよ あわててや すいっちぱちぱちと あれつかんがなー
台風の襲来、停電に慌ててスイッチを探し・・あれっ点かんがな! ボケ老人のお笑いコミック
《渋柿の 渋を変えてや 甘を生み 労苦重ねて 神技磨きし》
ーしぶがきの 渋を変えてや あまをうみ ろうくかさねて かみわざみがきしー
(奥深い 京瑠璃のこころを 玉に託する技に磨きをかけた君の修練を讃える)
《老ゆる秋 すべて直され 恥をかき いまだ男の 意地に生きしや》
-おゆるあき すべてなおされ はじをかき いまだおとこの いじにいきしやー
(われら後期高齢者のレッテル貼られしが、いまだ忘れぬ男の意地残りしや)
《行き過ぎて 金木犀の 残り香に ふと病床の 君思いしや》
-いきすぎて きんもくせい のこりがに ふとびょうしょうの きみおもいしやー
《団栗の 背比べ楽し スカウトの 友と遊びし 日々懐かしや》
-どんぐりのせくらべたのし すかうとの ともとあそびし ひびなつかしやー
《悠々と 白雲浮かぶ 秋日和 人の一生 かくありたしや》
-ゆうゆうと しろくもうかぶ あきびより ひとのいっしょう かくありたしやー
《せせらぎに 夢を託せし 紅葉船 旅を終えてや 一息つきし》
-せせらぎに ゆめをたくせし もみじぶね たびをおえてや ひといきつきしー
(君の安らぎの顔を見るに、やりつくした男を見る思いである)
《カーテンに 影のごとく 踊る陰 今日も生かさる 君が揺れるや》
-かーてんに かげのごとく おどるかげ けふもいかさる きみがゆれるやー
《一筋の 光の温み 心さし 広がる幸や 君を想いし》
-ひとすじのひかりのぬくみ こころさし ひろがるさちや きみをおもいしー
(君を想う奥さんに感謝やね)
《友求め 共に称えつ 認めあい 支えしこの世 美しきかな》
ーとももとめ ともにたたえつ みとめあい ささえしこのよ うつくしきかなー
《不思議だね あれこれあれど 人の道 生かし導かれ ゴールは一つ》
ーふしぎだね あれこれあれど ひとのみち いかしみちびかれ ごーるはひとつー
ベトナム・ダナンのスケッチにみる満月の夜、寺院を見て人の道を想う
《吐く息の 一つ一つに 生きし君 熱き思いで 満ちてあふるる》
-はくいきの ひとつひとつに いきしきみ あつきおもいで みちてあふるるー
《嬉しいな 心の友と 呼べる君 握りし手をや 握り返せし》
-うれしいな こころのともと よべるきみ にぎりしておや にぎりかえせしー
《自分史を 飾る人生 とんぼ玉 喫茶を愛し スカウトを愛す》
ーじぶんしを かざるじんせい とんぼたま きっさをあいし すかうとをあいすー
《ありがたや 今日も生かされ 出会いあり 今日の善行 一日笑顔》 2019/11/14
―ありがたや けふもいかされ であいあり けふのぜんこう いちにちえがおー
(2019年11月14日旅たちの朝に贈ったスカウトの標語<一日一善>が最後の短歌となった)
君の笑顔に感謝
(前列左より 後藤・岩口・前田・竹中・竹内・福井・桐山・井上)
■朋友・竹内正照(号 琥衆)を見送る
2019(令和元)年11月14-15日 志賀の里弧庵にて
2019(令和元)年11月14日午後8時、I病院313号室にて帰天す・・・
君を見舞いてのち、翌日夜、君の旅たちの悲しき知らせあり・・・
ここに、短歌を添えて君・琥衆を見送る・・・
《無の風に 戯れ遊ぶ 雲遮月 悲しみ深き 君の旅たち》
-むのかぜに たわむれあそぶ うんしゃげつ かなしみぶかき きみにたびたちー
《つとめ終え 清きこころに 包まれて 笑みつつ去りし 我友の顔》
-つとめおえ きよきこころに つつまれて えみつつさりし わがとものかおー
《時来たり 旅立ちし君 スカウトや こころ清めて 弥栄(イヤサカ)贈る》
-とききたり たびたちしきみ すかうとや こころきよめて いやさかおくるー
《君の愛 花咲き実る とんぼ玉 命の調べ いついつまでも》
-きみのあい はなさきみのる とんぼたま いのちのしらべ いついつまでもー
《君なりの ガラスの世界 切り拓き 苦難の技を 宝に変えし》
ーきみなりの がらすのせかい きりひらき くなんのわざを たからにかえしー
《安かれと 祈りし我に 微笑みて 清けき風に 戯る君や》
-やすかれと いのりしわれに ほほえみて こよこかぜに たわむるきみやー
《風そよぎ 白雲浮かぶ 秋日和 聖なる君や 天に召さるる》
ーかぜそよぎ しろくもうかぶ あきびより せいなるきみや てんにめさるるー
《君去りて さすらうままに 日は暮れて 悲しみふかし 我胸のうち》
-きみさりて さすらうままにひはくれて かなしみふかし わがむねのうちー
《早くして 天に召されし 君なれど 幽玄の世を 創りてや君》
-はやくして てんにめされし きみなれど ゆうげんのよを つくりてやきみー
《永遠の ローバースカウト 天に往き 湖畔に沈む 夕日静けき》
-えいえんの ろーばーすかうと てんにゆき こはんにしずむ ゆうひしずけきー
《友往きて 香り遺せし 白菊の 想いて哀し 君の残像》
ーともゆきて かおりのこせし しらぎくの おもいてかなし きみのざんぞうー
弥栄合掌
-イヤサカがっしょうー
■初七日、君に別れを告げる
2019年11月16日 家族葬営まれる
2019(令和元)年11月16日午後2時、琵琶湖大橋会館<洛王セレモニーホール>にて家族葬が営まれ、<志賀聖苑>で荼毘に付されたとの連絡がもたらされた。
永年の友情に感謝し、君の旅たちに弥栄<イヤサカ>を三唱し、見送るものである。
今朝は君の大好きなコーヒーを点てたよ。楽しい思い出を語りあいながら一緒に飲もう・・・
《一杯の コーヒーを点てて 供えしは この日忘れじ 君との別れ》
-いっぱいの こーひーたてて そなえしは このひわすれじ きみとのわかれー
《一筋の 線香煙る 朝坐禅 君を見つめて 祈り贈るや》
-ひとすじの せんこうかおる あさざぜん きみをみつめて いのりおくるやー
《膝屈伸 曲げるたびに 笑み浮かべ うなずき催促 最後の別れ》
-ひざくっしん まげるたびに えみうかべ うなずきさいそく さいごのわかれー
君より贈られた初期の作品<ワイングラス>に赤ワインを注ぎ、線香を立てたよ
今朝は、素敵な秋晴れ、自宅に帰り、ほっとしただろうね。お疲れさまでした。
君の初期の作品であるギアマンに赤ワインを満たし、君の前に備えたよ。
お味はどうかな。
《青春の 夢追いかけし 君おりて 赤いグラスに 血潮見るなり》
-せいしゅんの ゆめおいかけし きみおりて あかいぐらすに ちしおみるなりー
《西方の 満ちし星たち 我招き 語り歩きし 黄昏小路》
-せいほうの みちしほしたち われまねき かたりあるきし たそがれこみちー
《嵐にも 雨にも耐えし 君ゆえに 京瑠璃の技 極めつくせし》
-あらしにも あめにもたえし きみゆえに きょうるりのわざ きわめつくせしー
おはようさん、今朝の地上は薄曇り、そちら天国は秋晴れかな・・・
君のトンボ玉への心を読んでみたよ・・・
《京瑠璃の 琥珀に沈む トンボ玉 究極の技 求めしや君》
-きょうるりの こはくにしずむ とんぼたま きゅうきょくのわざ もとめしきみやー
そちらはどう? こちらとっても寒くなったよ。そうそう、京都キャンプ協会の会長から君の訃報を事務局から聞いたと連絡があったよ。
今朝の一句は、われわれが還暦を記念して、比叡平にある<喫茶 叡林>だったかな、そこで<ちぢみ>を食べながら、熱く語り合った日を思い出したんだ。憶えているかな?
-かんれきに ひえいたいらで ちぢみくい どうむのごとく あつくかたりしー
わが祭壇に飾られた君の遺影、トンボ玉に真剣に取り組んでいる姿は実に美しくもある。そこには高貴な匂いすら漂っているよ。
そうそう比叡平で一緒に食べた<ちぢみ>は、どうも記憶によると<中華料理 南山>であるらしい。
《向き合いて 溢れる慈愛 涙する 挑みし姿 高貴なるかな》
-むきあいて あふるるじあい なみだする いどみしすがた こうきなるかなー
君の初七日、散歩中に出会った沢蟹に誘われて、森の木陰で、君の再来とばかり話し込んだよ。
《君去りて 姿変しや 沢蟹の 愛語交わせし 森の木陰で》
-きみさりて すがたかえしや さわがにの あいごかわせし もりのこかげでー
君去って、初七日までゆっくりと君を見送ることができて喜び、感謝してるよ。
これで日常に戻ることができるというものだ。
《ちっぽけな 命はぐくむ 我らとて 悠久背負う 太陽の子や》
-ちっぽけな いのちはぐくむ われらとて ゆうきゅうせおう たいようのかやー
《わが一歩 君の一歩に 重なりて 人の道をや 神に託せし》
-わがいっぽ きみのいっぽに かさなりて ひとのみちをや かみにたくせしー
《君往きて 姿亡きあと 香あり 無垢なる笑みを 風に乗せてや》
-きみゆきて すがたなきあと かおりあり むくなるえみを かぜにのせてやー
では、ゆっくりお休み
■2020年11月14日 ダンディな朋友 竹内正照君(号 琥衆)の一周忌を偲んで
《君想ふ 去りて遺すや 人ごころ 絆ふくらむ 過ぎし日々かな》
ーきみおもう さりてのこすや ひとごころ きずなふくらむ すぎしひびかなー
《とんぼ玉 君なる世界の 深みにて 優美に舞いし 幽玄の世や》
ーとんぼだま きみなるせかいの ふかみにて ゆうびにまいし ゆうげんのせかいやー
《相寄りて 昔懐かし 友の顔 染みる話に 時を超えてや》
-あいよりて むかしなつかし とものかお しみるはなしに ときをこえてやー
《過ぎ去りし 懐かしき日々 君おりて 眺むるかなた 笑顔ありてや》
-すぎさりし なつかしきひび きみおりて ながむるかなた えがおありてやー
もう一年もたったんだね、そちらはどう・・・
赤ワイン届いたかな・・・
2019-2020
朋友 竹内正照君(号 琥衆)の一周忌を偲ぶ短歌集
完