―1961年<同志社大学ローバースカウト発隊準備ノート>を覗く―
台風14号の接近で、西の空は風雲急を告げるどんよりとした黒雲に覆われていた。
時折、風に揺れる樹木の下に同じ釜の飯を食い、<同志社ローバースカウトの隊歌>を叫びながら暁のなかを行軍した仲間同志、ローバーの路線対決に口角泡を飛ばし論じ合ったライバル同志、お互いにこやかに久闊を叙す情景が、あちこちで喜びの声を上げていた。
国内各地から、また遠くアメリカ・ロスアンゼルスから駈け付けた仲間の顔は、皺に歴史を刻み、頭髪に年輪を感じる豊かな表情で、青年のような興奮した甲高いしわがれ声と、秘めたライバル意識を思い出しながら、体形の崩れた肩を組み合っての写真撮影、しわだらけの手を握り合い抱き合う姿が繰り広げられた。
ここは、京都の奥座敷と言われる洛西にある緑豊かな宇多野ユースホステルの前庭である。
隊旗がなびくなか、馬蹄形の集合サインに一瞬戸惑いながら、老いで鈍くなった体を寄せ合い、引っ張り合って不定形な円形で落ち着つかせて、同志社大学ローバースカウト隊(日本ボーイスカウト京都第43団青年隊)の60周年記念式典開会の宣言が、司会者田中公郎同志社ローバーOGOB会幹事長によってなされた。
一瞬、老―婆―達は、篠田常生会長による60周年に触れた話に、曲がった腰や背中を延ばして、直立変形のまま緊張感をもって聴き入った。
この日は、スペイン風邪以来の歴史的疫病、未曽有のコロナ禍により延期されていた待ちに待った一年遅れの<同志社ローバー60周年>を祝う日である。実行委員会(委員長上嶋洋誉氏とスタッフ)の努力と決断が実っての開催、その努力に報いる形で50名近くのローバー達が日本各地、世界の片隅から駆け付けた。
同志社ローバーの60年の歴史にも、人生と同じく、現役ローバーの不在により登録が出来ずに解散するという苦渋に満ちた決断、苦難の時代があった。
ひとつの組織を運営し継続させることの難しさをローバー一人一人が理解していたがゆえに、60年と言う節目を我ごとのように喜び、はせ参じたと確信している。
この60年と言う歴史を受け継いできた黒木保博元団委員長や各年代の隊長はじめスタッフ、そしてOGOB会長・副会長・幹事長および運営委員の努力に、また陰で見守っていただいた先輩である元団委員長八木清氏、元隊長佐藤義雄氏、元顧問長谷川凡次郎氏、元顧問小野高治氏、元副長井上哲士氏ほか、多くの隊指導者及び団委員のみなさんお一人お一人に幾度感謝しても言い足りないのである。
この式典で、同志社大学教授として、また同志社ローバー隊団委員長として運営維持にあたって長年ご苦労いただいた黒木保博氏にOGOB会から感謝状が手渡された。いつまでも拍手が止まず、天高くこだました。
迷指揮者によるカレッジソングや、楽譜がないという<同志社ローバー隊歌>の不一致なる歌声が、またこころに染みてきたものである。
見果てぬ夢を求めて、65周年での再会を約し、式典は和やかに幕を閉じた。
(後藤實久記 60年度生)
新島会館にて 2008年5月17日
京都宇多野ユースホステルにて 2022年17~18日
同志社ローバース60周年記念集会 宇多野ユースホステル前庭にて馬蹄型記念式
苦節のローバーを支えた元団委員長 黒木保博氏、 60周年記念懇親会
篠田常生同志社ローバーOGOB会長より功労賞を受ける
最終日の総会で田中公郎幹事長より紹介される 新幹事長に指名された大嶋正徳氏(73年度生)
OGOB新会長 山科隆雄氏(69年度生)
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《1961 同志社ローバース設立準備ノートより資料続編》
(文責 後藤實久 1960年度生)
60周年を迎え、同志社ローバ―スカウト隊の懐かしい設立準備の裏側を覗いておきたい。
1961年(昭和36)4月3日の学期はじめ、新入生として登校してきた桐山隆生氏に声をかけ、竹内正照氏を連れだし、先輩の竹中建三氏・岩口誠一氏に協力を仰ぎ、福井象三氏・前田隆之氏に声をかけて設立当初の核が創られた。
同志社大学の先輩である元京都連盟理事長 八木清氏を相談役に仰ぎ、北斗地区副コミッショナーの井上哲士氏(1954年卒)の助言を得て、設立準備に入った。
■資料 《 団組織・発隊式に関する準備メモ 》(1961/昭和36)
<1961年4月3日―メモ>
・育成会長・団委員長・団委員の依頼・決定<住所・TEL・年齢必要>
・隊員の発掘および隊員数の確認<発隊に必要な人数の確認>
・発隊式(発団式)招待者の範囲・会場・記念品・発隊式の規模・ネッカチーフ(寄付?)
<結成式準備打合せ>
1.期日の決定:昭和36年6月17日(土曜日)午後4:30~5:30
2.会場:同志社大学構内とし、河合学生課主事に相談
3.記念品:検討のこと(ネッカチーフ?)
4.招待者範囲 (結成式集合写真―同志社教会前参照)
5.プログラム:結成式の規模・内容・進行・配置・備品(隊旗ほか)
6.役割分担:会計・渉外(BS関係)・渉内(学内関係)・記録&印刷
7.隊費(連絡事務費)・備品費(ネッカチーフ/ワッペン/ガータ/ローバー徽章)
8.登録関係の確認(登録証・団名・スカウト登録番号・登録費用ほか)
■資料 《昭和36(1961)6年7日―結隊式招待状》
団 委 員 長 殿 昭和36年6月7日
殿
三指 このたび 永年の夢でありました同志社ローバースカウトを
結成することになりました。
この一粒のスカウトの種は、将来 同志社学園にスカウト精神と
新島精神に基づきスカウト運動を展開する一大構想をもって
おりますので末永く諸先輩方のご支援をお願いいたします。
つきましては結成式を下記の様に実施いたしますので万障繰合わ
せの上ご出席下さい。
日 時 昭和36年6月17日(土曜日)
午後4:30~5:30
(各校門にいるスカウトにより会場へ) 弥栄
(返信先―往復葉書 表)
■資料 《団委員任命依頼状 葉書》
各位におかれましては、ご健勝のことと拝します。
すでにご承知のように、長年の夢であった同志社ローバークルーが
誕生することになりました。
つきましては、誠に勝手ながら 様を団委員に任命
いたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
1961年5月10日
団委員長 八木 清
■資料 《同志社大学スカウト同好会 初代顧問委嘱の件》
顧問委嘱に関しては、当初団委員就任予定の同志社大学教授・同大体育課主事の田淵潔先生に相談し、榊原経済学部教授をご紹介いただいたが実現しなかった。
最終的に、佐藤義雄隊長の紹介で、隊長と同じKBS19団委員であり、同志社ローバー隊の団委員をお引き受けいただいた長谷川凡次郎法学部教授に同志社大学スカウト同好会の顧問をお願することに決した。
■資料 《同志社大学ローバースカウト隊発起隊員 及び 同志社関係者》
3年 竹中建三 KBS14
3年 岩口誠一 KBS15
3年 福井象三 KBS08
2年 後藤實久 KBS11
2年 前田隆之 KBS19
1年 桐山隆生 KBS01
1年 竹内正照 KBS28
<発隊式後加入の仲間―1961年後期>
2年 花畑舜一 箕面1
1年 牧田義二 東京 (同志社大学ローバースカウト隊歌 作詞作曲者)
1年 南条信隆 大阪
1年 西川 徹 箕面1
団委員長 八木 清 同志社大学卒・ボーイスカウト京都連盟理事長
団委員 田淵 潔 同志社大学教授・同大体育課主事
団委員 生島吉造 同志社香里高校長
団委員 長谷川凡次郎 同志社大学教授
育成会長 堀 宣一 (予定)息子さん同志社大卒・京都連盟副理事長
隊長 佐藤義雄 前同志社大学教授・弁護士・京都連盟副理事長
副長 井上哲士 同志社大学卒・KBS北斗地区副コミッショナー
(1961年当時の役職名・敬称略)
■《ボーイスカウト日本連盟への登録申請》(京都連盟へ提出)
当時の京都連盟事務局(東山区清水坂近くにあった中野恭雄県コミショナ―宅)提出
1991年6月17日付登録完了(この日を結団式としている)
・正式登録名称 <ボーイスカウト京都連盟第43団青年隊>
・大学登録名称 <スカウト同好会>
・隊旗 日本連盟需品部に隊旗発注
・ワッペン原案の作成
京都連盟八木清理事長(同志社大学ローバースカウト隊団委員長)より発隊当初の
ワッペンとネッカチーフを寄贈される。
設立準備ノートに描かれたワッペン原図メモ(左)と現在のOB用ワッペン、ネッカチーフ
(お願い)UNIV.のVを省略して発注、幻のワッペン約20枚製作(貴重なので、もし保管している場合、
永久保存のためOGOB会事務局へ寄贈をお願いしたい)
■資料 《同志社大学へのクラブ設立申請書提出》
―学生課・体育会系団体・同好会へ提出-
- (ローバースカウトの)趣旨
- (ボーイスカウトと)同志社との関連性
- 顧問教授名(学部): 長谷川凡次郎法学部教授
- クラブ(同好会)責任者名:桐山隆生(渉外・学内担当)
- クラブ(同好会)連絡先:同好会部室(新町校舎)
- 団員氏名一覧表(住所・学部・学籍番号・年齢)
□部外団体(同好会)加盟申請―手続き方法・学生部相談(河合主事)
□同志社大学とRover Scoutとの関連性 (後述参照)
―同志社スカウト同好会設立申請書添付書類-
ローバースカウトは大人であり、精神的な面で一つの認識を有する者である故、宗教問題についても核とした見識を持たなければならない。
宗教問題は、われわれスカウトの<三つの誓い>第一条に掲げられている最も重要なテーマであるが、現存する各大学のローバースカウト隊(スカウト青年隊)では、一部の隊を除き立ち入って検討されていないのが現状である。
同志社ローバース・クルーは同志社精神の根本であるキリスト教を誓いの第一条に掲げ、日本における各ローバースの主導的、模範的立場にあるべきだと確信して、同志社在学のスカウトをもって設立されたものである。
なお、京都における大学ローバースは、同志社大学に、京都大学、龍谷大学、大谷大学、京都外大を加え5校を数える。
■資料 《1961年度~ 同志社イブ Doshisha EVE出店》
―学内宣伝・スカウト仲間募集-
1.トーテムポール作成展示(同志社教会チャペル前スペース)
2.モンキーブリッジの製作(同上 巨大樹木使用許可取得)
3.ティーピー・インディアンテントの設置
4.スカウト運動展示(有終館1階教室にパネル・写真・スカウト備品展示)
5.おでん屋開店(集会用テントを設営・おでんの提供・活動資金確保)
6.EVE実行委員会主催《EVE仮装パレード》の先導奉仕
1961 DOSHISHA EVE 参加デモンストレーション①
同志社教会・中学前広場にてトーテムポール・モンキーブリッジ・ティピーテントを披露
手旗信号台・テント内に<おでんコーナー>を開店
1961 DOSHISHA EVE 参加デモンストレーション②
ボーイスカウト運動に関する記章・グッズ及び同志社ローバー活動の紹介
1961同志社EVE参加のローバー&レンジャースカウト
同志社教会前トーテムポールと共に
後藤/桐山/牧田/高橋(岩口)/竹中 竹内/吉村(仁科)/諏訪(東山)/C
63‘DOSHISHA EVE 案内葉書
■資料 《同志社ローバース初期の活動 1961~62年活動写真集》
青空部室でのミーティング Doshisha EVE スカウトランド受付風景
福井/霜野/西沢/後藤/牧田/竹中 A/B/桐山/南条/諏訪/C
明徳館前 同志社教会・中学前
高見/西沢/D/E 西川/花畑/桐山/A/高見
どこへ行くにも金魚の糞的仲間 青空部室、誰かが待っているから嬉しい
桐山/西川/花畑/南条/竹中/竹内 南条/桐山/福井/牧田/霜野/竹中/西沢/後藤
宝が池でボート遊びをする仲間 EVE用トーテムポール モンキーブリッジ制作
南条/竹内/桐山/花畑/西川―竹中
(A~Eご存じの方お名前教えてください。レンジャーは旧姓で表示)
■資料 《Rover Moot―1965年度 第5回ローバームート参加準備担当》
ローバームート 1965年8月25日~31日
富士五湖(山中湖畔-箱根越)・山中野営場(ベースキャンプ)
オリエンテーリング・乗馬・水上訓練・信号塔工作・救急訓練/結索法(陸上自衛隊)・
営火・交歓・地図研究・炊事法
参加費:1500円
参加者:1名(同志社ローバー代表として参加・隊付として奉仕)
第5回ローバームート 日本連盟山中野営場
山口隊長とスタッフ5名、参加ローバース73名
ローバムート1泊ハイキング出発式 明治大学ローバークルーと
ローバームート隊付として奉仕
■資料 《京都の大学ローバー連絡会発足準備》
会場:本願寺会館 1962年4月11日(11am)
議題 京都RS連絡協議会発足準備について
ローバース合同研修について
ローバームート参加について
<1962年当時の京都連盟所属ローバー隊の隊員数>
龍谷大学ローバース 38名
大谷大学ローバース 36名
同志社大学ローバース 16名
京都大学ローバース 15名
京都外大ローバース 16名(未経験スカウト中心)
京都19団ローバース 活動無し
東京からの富士スカウト牧田義二氏を同志社ローバーに迎え、さっそく隊歌の作詞作曲にとりかかってもらった。当初、書き上げてもらった楽譜を紛失し、60周年を迎えるまで口伝えで歌われてきた幻の隊歌である。
60周年を記念し、発団式当時歌唱指導していた桐山隆生氏の独唱テープより楽譜を再現してみたことはすでにご承知のとおりである。
ここにあらためて、新楽譜を掲載し、桐山氏の独唱テープを添えておきたい。
隊歌独唱 桐山隆生氏
<お詫び: 残念ながら、未対応ファイル形式で再生不可能である>
―1961年<同志社大学ローバースカウト発隊準備ノート>を覗く―
完
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<関係ブログ>
https://shiganosato-goto.hatenablog.com/entry/2022/09/22/100631
《星の巡礼 同志社ローバースカウト60周年を祝う》 2022年9月17~18日 京都、宇多野ユースホステルで実施された<同志社ローバー60周年記念の集い>に出かけ、多くの仲間と久闊を叙しました。 今ではすっかり翁になった同志である老兵と会話を楽しんでいると…