2017『星の巡礼・ 比叡比良全山大縦走 』 1
『星の巡礼・比叡比良全山大縦走ルート案内』①
― 3泊4日老人てくてくトレッキング―
非日常から帰還した。
< 野に臥して>
詩 後藤實久
山、そこは原始にもどれる故郷があり
生き抜くために野生に返る
こころもたましいも自然にかえり
五感を研ぎ澄ませ天道に従う
獣道に導かれ野に臥して
星座を仰ぎ野の人となる
ああわれいま比叡比良におりて
満ち足りしのち宇宙に溶けゆく
これまで比叡山系、比良山系を個別に縦走してきた。
今回、はじめての比叡比良山系全山大縦走で、老人てくてく3泊4日のトレッキングを楽しんできた。
歳を重ね、チャレンジすべきかどうか思案していた「比叡比良山系大縦走」を決意させた慶事があった。
長年にわたって比叡山系と比良山系を結ぶ途中峠付近の接続ルートを探索してきた。
しかし、いままで比叡比良山系大縦走45kmは一度もチャレンジしていなかった。
「比叡比良山系大縦走」を集大成するための準備がすべて整っていたが、体力という一抹の不安が残っていたからである。
千日回峰達成のニュースは、勇気と決心を与えてくれた。
古来より、京より近江に抜けるには、逢坂の関越えか途中峠越え、または宇治より瀬田に抜ける三つのルートしかなかった。
また、北國より京へ兵をすすめる、北国の豊かなコメを送り込む進軍または兵站、それ以上に都人の食糧調達の道として重要であった。
そこには反省があり、夢があり、次の世への一歩があるような気がしていた。
一歩の大切さをかみしめながらの「比叡比良山系てくてく大縦走」となった。
引き返せない年齢に振り分けられ、その歳への挑戦の感も強く、後に引けない意地も働いたことも確である。
さて、この「比叡比良山系大縦走ルート案内」は、念願の比叡比良縦走のルート固定化の第一歩であり、おおくの縦走トレッカーにルート紹介を兼ねたブログでもある。
油断は禁物であるという「山の教訓」を忘れず、それぞれの体力にあった時間をかけて楽しんでいただきたい。
両山系接続「途中越エリア」については、後で詳述したい。
ほかにも「比叡比良縦走」に関するいくつかのブログが発表されているので、比較・補足研究されることをおすすめする。
比叡比良山系全山縦走者には、山岳ランナーによる24時間完走や両山系を二回に分けた縦走のやり方などいろいろな縦走形態がある。
今回は、比叡比良山系を一気に縦走することから見えてくる風景(問題点)をとりあげてみたい。
ただし、時間表示、万歩計による数字などは老人によるものであることをご承知おき願いたい。
個人差を加味したうえで、参考になれば幸いである。
では、さっそく「比叡比良全山大縦走」に出かけて見よう。
比叡比良山系大縦走中、おおくの生き物たちに出合い、詠い、語りあい、励ましをうけた。
ブナの老木たち、杉の尖兵たち、雑木林を守る雑兵たち、秋の色に染まる落葉たち、歩きに奏でる有機体の死骸たち、誘惑媚びる毒キノコたち、一滴のよだれに群がるコツノアリたち、そこには生きいきした命があふれていた。
出迎えてくれたブナの老木
千日回峰僧を出迎え見守る玉体杉にも背中を押される
擬態も本物、比良の杜を守る「比良ガマガエル」が声援を送る
ペットボトルの口まわり、菓子パンの包み紙、体に付いたすこしの甘味、パンツの中ほかあらゆる
生活の痕跡に群がる日本一小さな働きアリたちである。払っても、その襲撃から逃れることは
出来ない。 その名は日本で一番小さなコツノアリである。
縦走中、リュックに潜り込んで共に行動をした。
下山して数日たつが、いまだ体に残る噛み跡の痒いこと、小さい蟻たちの生存権、生きる権利の主張にも耳を傾けてきた。
巨岩もまたあたたかい励ましを送る
四ツ又老大杉の貫録に圧倒される
杉林の先兵たち :スギ花粉の元凶と嫌われるが、山の荒廃を防ぐ守護神としての役割は絶大である
比叡比良の山々は、さすがに山岳宗教の修験道場である。
慈悲の笑みで迎えてくれるお地蔵さんたちからもれてくる、励ましと祈りの言葉に背中を押される。
また、愛する者たちの悲しい別離の山でもある。比良の山は多くの尊い命をのみこんできた。
御霊をなぐさめる地蔵さんたちも、あとにつづく登山者の安全を見守ってくれている。
地蔵さんたちの声援がかしましい
道中、出迎えの地蔵さんたちの声援に感謝
比良の山に命輝かせるお地蔵さんたちから声援をうける
『星の巡礼・比叡比良全山大縦走ルート案内』 ②
― 3泊4日老人てくてくトレッキング―
次回
<比叡比良山系大縦走ルート上の今回の給水ポイント>
につづく