shiganosato-gotoの日記

星の巡礼者としてここ地球星での出会いを紹介しています。

『星の巡礼・ユーコン紀行』 <ユーコン・ カヌーの旅360km日記> ④


■「テスリン・ユーコン川 カヌーの旅360km日記」  ④

●  6日目  <9月21日>


いよいよユーコンの本流下りである。

川地図を見る限り、テスリン川に比べユーコン川はS字やW字蛇行が多く見受けられる。それだけ流れにも、景観にも変化がありそうである。 楽しみである。

乾燥した衣類や野営用具をパッキング。火床、工作物を解体し、野外トイレに土をかぶせてもとにもどす。 オートミルで簡単に朝食をすませ、感謝の祈りを捧げて、2日間お世話になったユーコンのフータリンカに別れを告げた。


イメージ 1
 ユーコン本流 フータリンカをでてすぐ左の中州がシップヤード

カヤックのW氏とは、3日後の最終地・カーマックスにある<Coal Mine Camp Groundでの 集合時間16:00>を確認し、お互いの安全を祈ってしばしの別れをした。もちろん舟足の遅いカヌーが先発である。
 
遠くのカナディアン・ロッキーの峰々が真っ白な雪帽子をかぶり、近くの白樺の黄葉が光り輝き、樅の木が連なって天を突き、荒らしい崖の造形に迎えられ、むき出しの岩山に襲いかかられながら秋のユーコンを漂流する。まるで大自然を舞台にミュージカルを観賞しているような錯覚におちいる。 いや錯覚ではない、素晴らしい。
 

イメージ 7
ユーコンのS字・W字蛇行(カーブ・ベンド)の芸術的な外崖がつづく


また、一瞬にして空が暗くなり、小雨が舞う。川の色も変わり、虹がかかり大自然の舞台を盛り上げてくれるのである。


イメージ 2
 ユーコンのレインボー・ 虹の歓迎アーチ


小雨があり、虹が出たと思ったら、晴れ間が見え、川の色さえ明るく変化していくのが、ユーコンの晩秋の特徴である。


イメージ 3
樅ノ木の儀仗兵がユーコン両岸に立ち並ぶ


連日の荒れた夜空にオーロラを見ること叶わず、あと数日に期待をかける。
今日はユーコンに、われわれを歓迎する虹の橋がかかった。 この虹は、必ずやオーロラ観賞という夢を叶えてくれるに違いない。 虹に願いをこめ、祈った。


 
ユーコンの生き物たち>


食べものにありつけないグリズリーは、人間たちが持ち込む食糧の略奪に知恵をしぼることになる。
侵入者もまた食糧や生命防衛のための方策をたてねばならない。


ユーコンの主なキャンプサイトには鉄製のゴミや生もの収集の箱がおかれている。
それも知恵者のグリズリーに明けられないように鍵や閂(かんぬき)付である。
人間の食糧の美味さに慣れてもらっては、生態系を壊し、グリズリーの家畜化を恐れるからであろう。


ユーコンの深みは、すでに冬の到来を告げているかのように、
冷めたさの中に深い冬の重みを感じさせながら目の前を流れている。


9月下旬、この季節になると夢にも見たユーコンの野生動物 (いや 原住民)もめったに人間の前に姿をあらわすことはない。
なぜなら、 彼らにとっての川での獲物(食糧)であるカワヒメマスや鮭の姿さえ影をひそめて、挨拶すらないからである。


目をつぶってカヌーに仰向けに寝そべると、そこには深みのある青空が広がり、視界は円球の天空を映し出している。
静かに目を閉ざすとユーコンの流れが体の中を貫いていくではないか。


イメージ 9
漂流するカヌーで仰向けに寝そべるとユーコンの鼓動が聴こえてくる


このユーコンの世界に孤の自分があることへの歓びが心の底から湧きあがってくる。


川べりで草をはむムースと目が合った。めずらしい珍客を迎えるように身動きひとつせずに見つめている。 われわれもムース(ヘラジカ)に語りかけ、友情をたしかめるように愛語を送った。 彼らにとってユーコンは命をつなぐ大切な水源地であり、牧草地帯でもある。


イメージ 4 イメージ 5
 ユーコンの住人カリブ(ヘラジカ♀)                                   カリブ(ヘラジカ♂)


白いピッチが踊る長い淵、生きているユーコンの証なのだ。河岸の丘陵や林の影が黒い川面に映る。カヌーの縁からは、その暗黒の水の中を窺い知ることは出来ない。 たぶんサーモンたちが息を潜めて冬を迎える準備をしているのであろうか、寒さを避けるため遠く南の海へ旅立ったのであろうか。息をひそめるユーコンの静寂に、野生の生き物の鼓動が伝わってくる。


ネイチャーワールドとしてのユーコン河、野生動物の王様グリズリー・ベアー、ブラック・ベアーやポークパイン・カリブ(トナカイ)、ムース(ヘラジカ)、狼、ハクトウワシ、フクロウたちがユーコンの住民である。


グリズリーはキャンプサイトの近くで獲物の食糧をねらっているのだろうが、その姿を見せることはなかった。朝起きてみると、たくさんのフッドプリント(足跡)が河岸や湿地帯に見られる。小型の足跡は狼か、コヨーテか。


帰りの車の中からハイウエーを歩くグリズリー・ベアーの後姿を観察することができた。


イメージ 6
 ユーコン住人のグリズリー・ベアー (ユーコン州観光課HPより)


ユーコン川   第六日目の野営>


Freeman's RockCampsite    17:30に上陸した。 フータリンカより68km地点の右岸にあり、付近には錆びついた金鉱用浚渫機である動力用スチーム・ボイラーらしき一部が放置されていた。

簡易テント設置の場所を決め、まず周辺を探索した。グリズリー・ベアーの足跡もなく、枝折れなども確認できなかった。 途中で集めた焚き木を抱えてもどり、 無人のサイトはいささか気味悪いので、勢いよく火をおこして、夕食の準備にとりかかった。


食糧の差入れによって、すべてがリッチな気分である。  お米にビーンズとツナを加え、パエイラ風の夕食をいただく。


今夜はいつもより底冷えの寒さを感じる。夜空に満天の星も輝き、雲一つもない。 オーロラの出現もありうるような気がする。


焚火で暖をとったあと、寝袋にもぐり込んで一眠りする。


イメージ 8
満月のもと、焚火で暖を取り、ユーコンの闇を楽しむ



                  「テスリン・ユーコン川 カヌーの旅360km日記」  ⑤
                                                 につづく