shiganosato-gotoの日記

星の巡礼者としてここ地球星での出会いを紹介しています。

潜伏キリシタンの里探訪 自転車巡礼 日記―⑬

2018『星の巡礼潜伏キリシタンの里 自転車の旅630km』 日記⑬

                                                   

潜伏キリシタンの里探訪 自転車の旅630km    9日目―③>  20189月9日
    ― 外海(そとみ)・黒崎教会  ⇒ 外海・出津教会  ―     走行距離 8 km

 

まもなく国道202号線の坂を下りだすと、黒崎漁港が目に飛び込んでくる。そして高台に、煉瓦造りの黒崎カトリック教会が海を見下ろすように建っている。
 
<黒崎カトリック教会>   長崎市(外海)上黒崎町26

教会入口付近に咲く可憐なヒメサユリが迎えてくれた。
1897年にド・ロ神父の指導で建設が進み、1920年に完成した、遠藤周作の小説『沈黙』の舞台ともなった黒崎の地に建つ教会である。
小説「沈黙」を書くにあたって、遠藤周作が最初に訪れたのがここ外海の黒崎カトリック教会であるといわれている。
聖堂は信徒が奉仕と犠牲の結晶として一つひとつ積み上げたレンガで造られている。煉瓦造、平屋、
桟瓦葺(さんかわらぶき)の簡素な構成が煉瓦の美しさを際立たせており、深い奥行を持つ内部は
リブ・ヴォールト天井と呼ばれ、ステンドグラスが印象的だ。付属する鐘楼は隠れキリシタンの帰依を願って
設置されたものであるという。

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       煉瓦造りの黒崎カトリック教会                                  教会への小道に咲くヒメサユリ


<枯松神社   祈りの岩>


左手に黒崎漁港をみながら自転車を走らせると国道202号線は橋を渡って黒崎教会の前に出る。その橋を渡る手前の道を右に入って、1kmほど先に枯松神社がある。
黒崎集落の潜伏キリシタンは、サン・ジワンの隠れ家だった(現在の枯松神社)場所に集り、オラショ(祈り)を捧げ、信仰を守ってきたという。


枯松神社に登る参道の左側に、潜伏キリシタンが年に一度、復活祭前の夜にオラショを唱えた場所で、数人が身を隠せる「祈りの岩」といわれる巨岩がある。
潜伏期、普段は周りに気づかれることを恐れ、声に出してオラショを唱えることはなかったが、この日だけは見張り役を立て岩陰に隠れるようにしてオラショを唱えたという。


山林に囲まれた静かな枯松神社は、黒崎集落に隠れ住む潜伏キリシタンの聖地であるようだ。神社への途中で、導きの蝶・モンキアゲハに再会して驚きをかくせなかった。


潜伏キリシタンの祈りのすがたが目に浮かんでくるようだ。

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         昼なお暗き枯松神社                         <祈りの岩 > オラショ(祈り)が聴こえてきそうだ

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   外海・黒松集落付近で再会したモンキアゲハ


<道の駅 夕陽が丘 そとめ>


黒崎カトリック教会より、国道202号線の上り坂をすすむと、城山から小城鼻への断崖に向かう丘陵に「道の駅 夕陽が丘 そとめ」がある。ここから見る東シナ海は、絶景ポイントである。また外海より弾圧を逃れて移住した平戸・生月・黒島・五島列島への船出の地でもある。

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                      道の駅 夕陽が丘 そとめ

 
遠藤周作文学館>                  (入館料360円)


「道の駅 夕陽が丘そとめ」の海側、眼下に白亜の建物「遠藤周作文学館」が、外海の黒崎集落、出津集落大野集落からの脱出潜伏キリシタンの航海安全を祈るかのように建てられている。


また、遠藤文学の原点とされる小説『沈黙』の舞台となった外海、主人公であるロドリゴ神父らがキチジローに案内され上陸した外海の浜を見下ろしている。


遠藤周作文学館の入口には、遠藤周作の等身大写真とマーティン・スコセッシ監督作品『沈黙 サイレンス』のポスターが出迎えてくれた。いま、わたしは潜伏キリシタンの原点に立っているというだけで、この星の巡礼を成し遂げたような満足感と、言い知れない幸福感を味わった。そして、挨拶文には・・・


     『沈黙』の舞台“外海”で、遠藤周作の魂が静かに語りかける


   「長崎市外海地区は、海、山、川の豊かな自然とその美しい景観をはじめ、独自の歴史と文化など地域
      固有の資源に恵まれている。
   とりわけ、この遠藤周作文学館が立地する地域は、キリシタン受難の歴史を有しながら、迫害を乗り越え、
   信仰が脈々と息づき、キリシタンの里と呼ばれており、遠藤文学の原点と目される小説「沈黙」の舞台と
   なった所である。


     遠藤周作文学館のテラスからは、遠く西洋へと繋がる角力灘賀が輝く美しい景色が広がる。遠藤周作
      『神様が僕のためにとっておいてくれた場所』と称した外海、この場所に、平成12年に遠藤周作文学館
   が完成した。


      遠藤周作と外海地区との縁は、「沈黙」執筆から始まり、これまで文学碑建立等をとおして築かれた
ものである。
   館内に一歩足を踏み入れると、グレゴリオ聖歌が優しく迎えてくれる。エントランスホールには、
   「沈黙」の文学世界と外海の海をイメージした青を基調とするステンドグラスを配し、展示室内には、
   西洋へと繋がる西側に海を見渡す出窓を設けることで、作家の精神世界を象徴している。

      作家の精神を感じる圧倒的な風景美とともに、遠藤周作の文学と思想を体感していただければ幸い
   である。」                                                                                              (解説書より一部抜粋)


館内には遠藤周作の生前の愛用品、遺品、生原稿、膨大な蔵書などが展示され、彼の生涯や足跡が紹介されているだけでなく、遠藤周作のこころの葛藤が満ちあふれている空間であり、神との真摯な向きあいの場でもあった。
海に突きだした出窓から、天と海をぼかしている一本の線、そう、水平線の向こうの世界を想像している自分に気付かされる。
遠藤周作の真理の世界に閉じ込められ、なかなか脱出できなかったが、外海の夕陽に誘われて遠藤周作文学館を後にすることにした。

いま、わが志賀の里にある孤庵にも旭日が差し込み、フォーレのレクイエムが静かに流れている。
静寂はわがこころを柔和にし、外海の海の沈黙がこころいっぱいに満ちてくるのを覚える。

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           外海・出津集落を見下ろす白亜の遠藤周作文学館
 
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遠藤周作文学館の入口

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        出迎えてくれた狐狸庵先生      マーティン・スコセッシ監督「沈黙―サイレンス―」


<外海・出津集落―出津文化村>  (出津・しつ)


遠藤周作文学館より、国道202号線を出津港を左手にみながら1.5kmほど走ると、出津集落に着く。現在、国道202号線を長崎市より佐世保市に向かって、西彼杵半島西岸を東シナ海沿いに北上中である。時々、地図を引っ張り出して現在地を確認しないと、あまりの海の美しさに己を失うことしばしばである。


     外海・出津集落              
     外海地域は、大村藩の所領であったが、大村城下から遠隔地であったこと、特に佐賀藩の飛び地が
    まじっていた黒崎、出津は、幕府の禁教令がゆるく、多くのキリシタンがいたという。


     かって、外海一帯には5000人近い潜伏キリシタン信徒がいたそうだが、1865大浦天主堂での信徒発見の
     半年後、密かにやってきた神父のもとに200戸がカトリックに復帰したといわれている。
     その後、1879年にド・ロ神父が出津に赴任し、信者と力をあわせ1882年に出津カトリック教会を完成させ
     ている。


     遠藤周作「沈黙の碑」
     出津文化村入口付近に、遠藤周作の沈黙の碑『人間がこんなに哀しいのに主よ海があまりに碧いのです』
     が建つ。この碑の後方に、遠藤周作文学館を遠望することができる。

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    出津集落「出津文化村」地図                                             遠藤周作「沈黙の碑」

          出津教会堂
          国道202号線の出津文化村入口より道なりに進み、「沈黙の碑」を過ぎて、400mほど自転車を
          走らせると右手に「出津カトリック教会」が見えてくる。前後の尖塔にマリア様と十字架があり、
          その壮麗であって清楚な佇まいは潜伏キリシタンへのいたわりと自信を感じさせる。


長崎教育委員会の説明を要約すると・・・
          国指定重要文化財である出津教会は、明治121879)年に外海地区の司祭として赴任した、
          フランス人のマルコ・マリ・ド・ロ神父により設計・施行された教会である。初期の教会は、煉瓦造りの
          壁面、内部の漆喰塗、木造桟瓦葺寄棟造り、内部は三廊式平天井であった。その後の増築拡張により、
        屋根の祭壇部が切妻造りに、厳寒部を拡張し、鐘塔を建てたとある。


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               出津教会

 

 

      潜伏キリシタンの里探訪 自転車の旅630km⑫

     2018年9月9日 ― 外海・出津教会 ⇒ 9日目露営地・擢坂公園           

                 につづく   

 

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