shiganosato-gotoの日記

星の巡礼者としてここ地球星での出会いを紹介しています。

2017『星の巡礼・ 比叡比良全山大縦走 』 6

2017『星の巡礼・ 比叡比良全山大縦走 』 6


星の巡礼・比叡比良全山大縦走ルート案内』 ⑥
   ― 34日老人てくてくトレッキング―
 
■超軽量ツエルト泊の日誌

<比叡比良山系大縦走 1日目伊香立越付近にてツエルト泊>
 
眠れずに参った。
久しぶりの野宿に興奮したのだろうか。
自家製の気付け薬「ウイスキー強壮剤」を飲んでも気を静まらない。うとうとと10時間もツエルトの
中で過ごしてしまった。
不眠の原因がみつからない。疲労のためなのか、枕が固いためか、寒さからかと考えたが、やはり久しぶりの男のロマンに気が昂っていたためか。
眠られないまま、持参した真空パック「五目飯」の食べ方を考え始めたから始末が悪い。
いままでの縦走では、水を注いだだけで食べられるアルファー米を主食としてきた。
今回は真空パックに替えてみた。
 
「五目飯」は期間中の夕食のメインになるはずであったが、水を注ぎ時間を充分とっても、まるで
玄米のように水分を受け付けず、ぼろぼろの粒状のままである。生米を食べているようで、
とうとう三口目に食することを諦めてしまった。

残念だが、以後「五目飯」は非常用食料としてリュックの片隅に眠ることになる。それも3袋(170gX3=510g)の重さを4日間背負い続けることになってしまった。
非常食にしたとしても、いざという時のために食べ方を考え始めたのである。
電子レンジ600wで2分、ガスバーナーで12分のボイルなど考えられない「五目飯」をなぜ主食として決めたのだろうか。出発前に試食しておけばよかったと悔やんだものだ。
スーパーで真空パック「五目飯」を見つけ、触った感触は柔らかくそのままでも食べられるとおもえた。
 
主食に関して、誤った選択は命取りになりかねない。こころして選定したい。
 
主食は出発前に必ず試食しておくこと、当たり前のことを怠るべきではない。
コッフェルとバーナーがあればと、反省しきりである。
また眠れなくなった。
大津の夜景が不夜城のように迫りくる、美しい。
翌朝、まだ夜の明けきらない5時に起床、感謝をささげて、出立した。
なお真空パック「五目飯」は、帰宅してレンジでクックして食べてみると、なんと美味しいことか、
残念でならない。
 
<比叡比良山系大縦走 2日目 蓬莱山麓にツエルト泊>
蓬莱の山頂に雨雲がかかりはじめている。
二泊目の露営地は、夕方近くに襲ってきた防雨風のため急遽、小女郎池と蓬莱山(1174m)との
中間でツエルトを張り潜り込んだ。
急ぎ携帯品をツエルトの中に放り込む。
チキンラーメンに水を注いでおいた、汁気のないふやけた夕食をかけこむ。喉に詰まり咽ぶ。
疲れがひどいのか食欲もない。
ただ栄養剤であるビタミン剤、Q&P/KOWA,ニンニク丸「アホエン」はしっかり放り込む。
 
強風と大雨にツエルトが激しく揺れ出した。ツエルトにたたきつける雨音が耳をつく。
真空パック「五目飯」事件に続いて、連夜の寝不足になりそうである。
一面笹におおわれた草原に、風景を彩る数本の低木しかない尾根、強風と大雨は西北の方から
暗闇のなか、蓬莱山の尾根に吹上げて琵琶湖へ下って行く。開放的なツエルトは風で引き裂かん
ばかりに揺れ、雨は寝床を濡らす、凄まじい風雨との格闘である。
 
そのようなとき、ふとここが比良山系の中でただ一カ所の携帯電話通話エリアであることに気付く
のである。
ヘッドランプの光りを頼りに、携帯の防水カバーをとり、電源をいれ、蓬莱直下にある自宅を呼び
出す。
人生でなんどか味わった、この時の安堵感、妻の優しい声、撤退のこころに揺れた。
その一瞬、すでに下界のパラダイスを思い描いたのだから、いかに人生を安易に過ごしてきたか、
おのれの意志の弱さに引き込まれていく姿に唖然とした。
苦しさから逃げ出すため、あす朝一番下山し、近くの温泉「比良とぴあ」の湯に浮かぶ己の姿を思い描いていたのである。
 
一方、挑戦遂行の強い心は、もう二度と比叡比良縦走などありえないという決意を伝えてくる。
なにがなんでも完遂すべきであるという。
悪天候のなかツエルトの破れから吹き込む風雨と戦いながら、おのれが山岳英雄に変わって行く
から不思議である。
頭の中で計算し始めていた。食糧や水は大丈夫か。体力は残っているか。
 
夜を徹しての野外交響曲、自然のハーモニーにうとうとと浅い眠りに心地よい。
一晩中つづいた自然とおのれとの戦いは、生きる力にみなぎり、まどろみの中に晴れやかな朝を
迎えた。
無残にもツエルトは引き裂かれていたが、防雨風はおさまっていた。
そして、心地よい戦いの後のおのれを見つめていた。
 
<比叡比良山系大縦走 3日目 武奈ケ岳麓・細川越での野宿>
 
破損したツエルトを諦め、朝露を避けるため繁った木の葉の下で、枯葉の上に寝床を作った。
ここは武奈ケ岳の北陵を下った細川越えである。北に明日向かう釣瓶岳1098mがあり、南東へ
下れば広谷に出る尾根の分岐にあたる地点である。
標識のすべてが無残にも柱から抜け落ち、枯葉の上に寝かされているのが印象的なところであった。
二日間の寝不足もあり、まだ陽は高かったが15:39露営のための設営を開始した。
空の状態もいい。雨風はなさそうである。
星がみられる夜空からは、夜露がたっぷりと降りそそぐことは知っている。
野宿、それも満天の星のもとに臥した。
今回の比叡比良大縦走での一大イベント「スターショー」を観賞できた。
 
 
<鹿と星>
 詩 後藤實久
 
鹿の長(おさ)だろうか
立派な角をもった雄鹿が
野に臥している聖なる露営地に
見回りをかねて挨拶にやってきた

いや許可なしの不審者をたしなめるごとく
脚を蹴りけり短い奇声を発している
こちらも口笛や鳴き声をまねて
「ごめんごめん無断で野宿しごめん」と
一宿の許可を求める

彼は短い奇声を発しながら
二時間ちかく侵入者を観察しつづける
うとうとしているうちに
許してくれたのかその姿は消えていた
 
そして闇夜は星の妖精で満ちている
真上に北極星がその優雅な姿を見せ
北斗七星が下から北極星を支え
右上からカシオペア座が見下ろしている
寝袋カバーをすっぽりかぶり

ぼくはカバーの穴から星空を見上げる
流れ星が走った
この広い宇宙の片隅から
ぼくもいつかこの星から流れ出て
ながい旅をおえ僕の星に帰る
その時が近いようだ

 
<比叡比良山系大縦走からみえる風景>

イメージ 1
 玉体杉より京都御所を拝する

イメージ 2
小野山670mより大津市びわ湖南湖を望む

イメージ 3
 蓬莱山①1174mより朝日に霞む沖島を望む

イメージ 4
蓬莱山②1174mよりびわ湖大橋を望む

イメージ 5 
蓬莱山頂1174mより朝日に染まるびわ湖の絶景に酔う     


                             『星の巡礼・比叡比良全山大縦走ルート案内』 ⑦
                                   ― 34日老人てくてくトレッキング―
 
        <比叡比良山系大縦走からみえる風景Ⅱ>
                 につづく