⑥須賀川を自転車で走る-2
現在の可伸庵跡(かしんあんあと)は東屋が建ち、四代目の栗の木が植えられた小さいながらも、手入れが行き届いた素晴らしい小公園になっている。
そして、芭蕉句碑「世の人の・・」と対面した。
可伸庵跡 芭蕉句碑「世の人の」
芭蕉 「世の人の 見付けぬ花や 軒の栗 」 (よのひとの みつけぬはなや のきのくり)
恐れながらわたしも一句
實久 「時経るや ひとも去らしむ 栗の庵 」 (ときへるや ひともさらしむくりのあん)
◎可伸庵跡
元禄2年(1689)4月22日(陽暦6月9日)、松尾芭蕉と門人の河合曽良は、おくのほそ道の旅の途中で、旧知の仲にあった相良等躬(さがらとうきゅう)を訪ねた。須賀川には八日間滞在し、近隣の寺社仏閣を訪れ、また地元の俳人たちとの俳諧を楽しんだ。
可伸庵跡は、等躬の屋敷の一隅に隠棲した僧・可伸(栗斎)庵跡である。
芭蕉は、可伸の閑寂な暮らしぶりに深く心を打たれ『隠れ家や 目立たぬ花を 軒の栗』と発句を読んでいる。
栗の若木の側に立つ石碑
須賀川の街から南へ離れた乙字ケ滝(おつじけたき)へ向かう。
アップアンドダウンを繰り返す坂道を阿武隈川畔にある滝見不動堂めざしての往復約10kmのサイクリング
である。
可伸庵跡を出て、国道118号線、いわゆる石川街道を約7km南東へ下ると左への分岐路がある。
分岐手前に「滝へ500m」の標識がある。 左に入り少し走るとバス停「乙字ケ滝」終点、ここから分岐をさらに左に進むと阿武隈川に架かる鮮やかな朱色の橋が目に飛び込んでくる。
阿武隈川に架かる朱色橋 「乙字ケ滝」石碑
渡ったところに「滝見不動堂」があり、ここから阿武隈川の中の100m幅で落差3~4mの壮観な滝を見ることができる。
この日は五月雨も集まらず、残念ながら豪快な滝姿を見ることはかなわなかった。
滝は大きく湾曲し、乙の字の形に見えることから乙字ケ滝と呼ばれているという。
御堂も阿武隈川を見下ろし、乙字ケ滝の景色に溶け込んでいる。
滝見不動堂と阿武隈川を彩る乙字ケ滝
水量の多い時の豪快な乙字ケ滝(O氏撮影)
滝見不動堂
意味 : この五月雨の降り方では、さぞや石河の滝は水嵩に耐えかねて埋まったようになっていることであろう
恐れながらわたしも一句
意味 : 五月雨も降らないが、勇壮な乙字の滝姿を想像するだけでも楽しいものだ
自転車を解体し車に積み込み、飯坂温泉へ向かう。
その後、5月1日郡山を出、歌枕の地「安積山」(あさかやま)に至る。
「安積山」(あさかやま)では、古今集に詠まれた「かつみ」、いまでいう「ひめしゃが」を探し歩いたとある。
いたという岩屋を訪れ、古人の心情に触れている。
こちらは、車で福島を通過し、飯坂温泉に急ぐ。
⑦飯坂温泉を自転車で巡る につづく