B 尾沢花を自転車で走る―2
山刀伐峠(なたぎりとうげ)トンネルの赤倉側登山口を17:18出発し、県道28号線を下り、国道347号線、国道13号線を北上、今夜の宿泊地、大きな駐車場のある「道の駅尾花沢」(花笠の里・ねまる)に19:00に着いた。
まず、花笠温泉「ふくの湯」(400円・山形県尾花沢市新町5丁目)で今日一日の歩きによる2つの峠越え「中山越え・山刀伐峠」での汗と疲れをとるため温泉につかり、赤ワインとチーズで道中の安全に感謝し、ささやかな祝杯をあげた。
花笠温泉「ふくの湯」で峠越えの疲れをとる
国道13号線にある「道の駅 尾花沢」
だが、紅花の開花を迎え、紅花問屋の島田屋鈴木家は繁忙期であったのであろう、宿として落成まもない養泉寺に案内している。
また、清風宅で泊まった際には、歌仙を巻き「おきふしの」句を残している。
尾花沢滞在10日目、旧暦5月27日、馬で送られて、山寺・立石寺へと旅立っていく。
2017年5月11日 朝5時30分、小雨降るなか、「道の駅 尾花沢」を後にして、芭蕉句碑「涼しさを我宿にしてねまる也」に出会うために養泉寺向かった。
「芭蕉清風記念館」は、残念ながら赤い札がかかり休館日であることを告げていた。
芭蕉清風記念館
記念館で迎えてくれる芭蕉翁像
◎尾花沢サイクリング・マップ <約3km、1.5Hコース>
◎恐れながらわたしも一句
⑭山刀伐峠⇒尾花沢 | ||
山刀伐峠 | 「田畑も 山刀伐眺む 夏峠」 | |
(なたぎりとうげ) | (でんばたも なたきりながむ なつとうげ) | |
「山刀伐に 翁追いてや 越えし夏」 | ||
(なたぎりに おきなおいてや こえしなつ) | ||
「涼しさを 我が宿にして ねまるなり」 | 養泉寺 | 「みだれ髪 古寺も涼けき 猫柳」 |
(すずしさを わがやどにして ねまるなり) | (みだれがみこじもすずけきねこやなぎ) |
解説 : 清風宅での手厚いもてなしへの感謝の句、「ねまる」は山形方言で、自分の家にいるような気のおけな
い寛ぎ方をいう、羽前赤倉の山中・山刀伐峠を越えてほっとした気分もこめた句
恐れながらわたしも一句
實久 「みだれ髪 古寺も涼けき 猫柳」 (みだれがみ こじもすずけき ねこやなぎ)
意味 : 柳のみだれ髪(ご婦人)に触れても 涼しげな古寺(のよう)に置きたや、浮き世(わが身)をば
◎ 「養泉寺」
芭蕉を偲ぶにふさわしい侘び寂びのある寺で、こころ洗われる。 芭蕉の面影や句碑を生業(なりわい)の一部とされていない無垢なお寺さんであり、わたしにとってありがたく、無常のなかにひたることができるお寺であった。
無常の中に出迎えてくれた養泉寺山門
芭蕉翁はここ養泉寺の一遇に7日間も泊まっているのである。 その姿が、そしてそのこころが見えるようである。
拝する者に寄り添うとともに、芭蕉に接するお寺さんの姿勢に共感した。
時に流されない養泉寺との出会いの機会を与えてくれた芭蕉翁にも感謝である。
養泉寺は、なだらかな丘の上にある。 鳥海の山や、まわりの田園風景に心憎いばかりに溶け込む。涼しい風が頬をやさしく触れていく。 この時期、東北のこの辺りは田に水は張られていない。 田起こし(耕起)の真っ最中である。 あいにくの曇り空、鳥海山は雲隠れ。
養泉寺の裏から絶景の鳥海山が見えるはずだが・・
境内に「涼し塚」、柴崎路水と鈴木素州が宝暦12年(1762)に建てた「涼しさを我宿にしてねまる也」の句碑がある。隣に「壷中居士」を刻む石碑とともに覆堂のなかにおさまっている。 壷中は次に向かう山寺(立石寺)にも「蝉塚」を立てた素封家でもある。
養泉寺境内 覆堂にある「涼し塚」 (左)
また、養泉寺の駐車場にむかう小路に、ひっそりたたずむ連句碑があるので紹介しておく。
すゞしさを我がやどにしてねまる也 芭蕉
つねのかやりに草の葉を燒 清風
鹿子立つをのへの清水田にかけて 曽良
ゆふづきまるし二の丸の跡 素英
養泉寺駐車場に立つ連句碑
涼しい風に背を押されながら養泉寺を後にして、尾花沢の街中へ自転車を向けた。
尾花沢から山寺へは、南へ国道13号線に乗り、山形市手前で県道19号線を東へ約40km、1時間15分のドライブである。
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<雪とスイカと花笠のまち>尾花沢のマンホール蓋のデザイン
養泉寺 芭蕉遺跡 「涼し塚」 解説版
⑮山寺を詣でる<2017年5月11日> につづく