shiganosato-gotoの日記

星の巡礼者としてここ地球星での出会いを紹介しています。

2017『星の巡礼・奥の細道紀行-句碑の前でわたしも一句』 52

2017『星の巡礼奥の細道紀行-句碑の前でわたしも一句』 52

山中温泉を自転車で巡る―②

 
「総湯 菊の湯」 


菊の湯の玄関をを入ると、正面に番台がある。どうも女湯がない、説明によると広場を隔てて奥に
「菊の湯女館」があるという。
山中温泉の中心部にある共同浴場「菊の湯」。天平風の力強い外観の男湯、「山中座」に併設しており優雅な曲線からなる屋根が美しい女湯と、男女別棟で建っている共同浴場は全国的にも珍しい。浴槽は1mと深く、立ち湯で入浴できる。
山中温泉は、1300年の歴史を誇る温泉地である。
芭蕉「山中や菊は手折らじ湯の匂い」と詠み、山中温泉のお湯ならば、菊の露など飲まなくても700年の不老長寿が得られるに違いないと絶賛している。
俳聖芭蕉が称賛した名湯に入ってみた。(500円)
 
 
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総湯 菊の湯(男湯)                                                総湯 菊の湯(女湯)  

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 明治40年頃の 山中温泉 菊の湯   (加賀)

 
◎ 「医王寺」

医王寺には、「総湯 菊の湯」に自転車をおき、徒歩で向かう。 国道364号線の薬師橋下をくぐる隧道を通って急な階段を上って行くと真言宗の古刹である医王寺山門に到る。鹿野住職の時報打鐘にお誘いいただき鐘楼に向かう。 また寺内にある芭蕉句碑をご案内いただいた。 感謝である。
「山中や 菊は手折らじ 湯のにほひ」
「若葉して 御目も雫 ぬぐはばや」 (山門に掲示

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医王寺山門                                            芭蕉句碑「山中や」(医王寺境内)

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医王寺鐘楼で鹿野住職と鐘をつく


                                                 「医王寺や 鐘も打ちたし 五月かな」
                                               (いおうじや かねもうしたし さつきかな)

◎恐れながらわたしも一句

山中温泉    
「湯の名残 今宵は肌の 寒からむ」 菊の湯前 「湯上りや 別れ旅路の ちぎり雲」
(ゆのなごり こよいははだの さむからむ)   (ゆあがりや わかれたびじの ちぎりくも)
    「湯煙に 燕の親子 姦しや」         
    (ゆけむりに つばめのおやこ かしましや) 
「今日よりや 書付消さん 笠の露」 大木戸門跡 「ひとときの 別れも寂し 笠の露」
(けふよりや かきつけけさん かさのつゆ) 芭蕉の館 (ひとときの わかれもさびし かさのつゆ)
「ゆきゆきて たおれ伏すとも 萩の原」 曽良の句 「朧月 ふたり別れの 湯の匂い」 
(ゆきゆきて たおれふすとも はぎのはら) 大木戸門跡 (おぼろづき ふたりわかれの ゆのにおい)
「山中や 菊は手折らじ 湯のにほひ」 道明ケ淵・慈母 「湯上りや 朧月夜に 影そぞろ」
(やまなかや きくはておらじ ゆのにほひ) 観音の右側 (ゆあがりや おぼろつきよに かげそぞろ)
「かがり火に 河鹿や波の 下むせび」 こおろぎ橋近く 「こおろぎも ぬくもりそぞろ 菊の湯や」
(かがりびに かじかやなみの したむせび) 医王寺・大木戸跡 (こおろぎも ぬくもりそぞろ きくのゆや)
「若葉して 御目も雫 ぬぐはばや」 医王寺山 「医王寺や 鐘が呼びたり 夏の雲」
わかばして おんめもしずく ぬぐはばや) 門柱左 (いおうじや かねがよびたり なつのくも)

芭蕉  「湯の名残 今宵は肌の 寒からむ」   (ゆのなごり こよいははだの さむからむ)
   解説 : 山中の湯もあなたのもてなしも共に温かあった。これから又旅を再開しますが、今夜の宿はさぞや
      肌寒いことでしょう。山中温泉では若い当主久米之介(挑妖)が実によくもてなしてくれた。感謝の
      言葉として、また一家の家宝として贈ったのであろう。挑妖の喜ぶ顔が分かるような句。

芭蕉  「今日よりや 書付消さん 笠の露」   (けふよりや かきつけけさん かさのつゆ)
 解説 :笈の小文』でも杜国との旅で「乾坤無住同行二人」と笠の内側に書いていた。曾良との今回の旅
      でも同じように書付があったのであろう。しかし、胃痛に堪えず曾良は長島に旅立ち、ひとりになった
      今となってはこの書付は消さなくてはならない。笠についている 秋の朝露か涙の滴でこれを消そうか。

曽良  「ゆきゆきて たおれ伏すとも 萩の原」   (ゆきゆきて たおれふすとも はぎのはら)

芭蕉  「山中や 菊は手折らじ 湯のにほひ」   (やまなかや きくはておらじ ゆのにほひ)
 解説 :謡曲『菊慈童』に、周の国の慈童が菊の露を飲んで不老長寿を得たとする話。これを題材として、
     薬効のある山中温泉のお湯ならば、菊の露など飲まなくても700年の不老長寿が得られるに違い
     ないと、宿屋の主人桃妖への挨拶吟。

芭蕉  「かがり火に 河鹿や波の 下むせび」   (かがりびに かじかやなみの したむせび)
 意味 :高瀬の漁火に照らされて、水の中のカジカは波の下で漁火にむせて鳴くのであろうか。いま、
     カジカの鳴声が聞こえる。

芭蕉  「若葉して 御目も雫 ぬぐはばや」   わかばして おんめもしずく ぬぐはばや)
 解説 :唐招提寺天平勝宝6年鑑真和上建立の寺。国宝鑑真和上像を見て詠んだ句。この柔らかい若葉で
     鑑真上人の見えなくなった目の涙を拭ってあげたい。

恐れながらわたしも一句
實久  「湯上りや 別れ旅路の ちぎり雲」   (ゆあがりや わかれたびじの ちぎりくも)
 意味 : 湯上りに、ちぎり雲を見ていると、同行二人で奥の細道を歩いた曽良とここ山中温泉で別れることは
      寂しい限りである

實久  「湯煙に 燕の親子 姦しや」   (ゆけむりに つばめのおやこ かしましや)
 意味 : 湯船から流れ出る名湯の湯煙りを浴びながら、なにを話をしているのだろうか、燕の親子が話に
      夢中になっている

實久  「ひとときの 別れも寂し 笠の露」   (ひとときの わかれもさびし かさのつゆ)
 意味 : また江戸で会えるとおもうが、旅はおたがい何が起こるかわからない、笠の露も別れを惜しんで
      いるようだ

實久  「朧月 ふたり別れの 湯の匂い」   (おぼろづき ふたりわかれの ゆのにおい)
 意味 : 芭蕉曽良は、ここ山中で別れ、それぞれの旅を続けるという、湯煙で月もおぼろ、いつまでも湯の
      匂いを忘れそうにない

實久  「湯上りや 朧月夜に 影そぞろ」   (ゆあがりや おぼろつきよに かげそぞろ)
 意味 : 曽良が別れ去って行った、湯上りのそぞろ歩きの影も朧月のためか、なにかぼやけてみえて侘しい

實久  「こおろぎも ぬくもりそぞろ 菊の湯や」   (こおろぎも ぬくもりそぞろ きくのゆや)
 意味 : 菊の湯帰りの蟋蟀(こおろぎ=温泉客)も、ぬくもりの中そぞろ歩いていることよ

實久  「医王寺や 鐘が呼びたり 夏の雲」   (いおうじや かねがよびたり なつのくも)
 意味 : 医王寺のご住職との、朝一番の打鐘に誘われて、入道雲が踊っているではないか

 
自転車で山中温泉の街並みを走りながら、たくさんの「恐れながらわたしも一句」を練った。 句作ノートがみるみる満たされていく。
楽しい時間が流れていくではないか。
気づけば、山中温泉大聖寺川の谷間である鶴仙渓も夕やみ迫り、湯上りの体も心地よくほてっている。
そろそろ寝床の準備にかからねばならない時間である。

信号「こおろぎ橋町」より、南へ300m先、左に「道の駅 山中温泉 ゆけむり健康村」がある。
今夜2017515日の設営地である。

チキン唐揚げ、野菜サラダ、インスタントみそ汁、残りカレーライス、すべてが美味しい。
腹満ちて、眠りにつく。 今日は、小松、那谷寺そして山中温泉芭蕉の足跡をたどったのだ。

中古軽自動車に巨体を横たえ、車中泊しながら日本の文化・自然に触れたいと日本一周しているというイングランドのポール君に出会ったのもここ道の駅・山中温泉である。


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道の駅  山中温泉 ゆけむり健康村


 
                       
                     9-1 福井・松岡・永平寺敦賀 大垣  奥の細道紀行 9>
                                福井から永平寺敦賀へと旅は続き、門弟たちが待つ
                                奥の細道最終地・大垣へ向かう


 
                          ㉙ 松岡・永平寺・福井を巡る2017516日>
                                                    につづく