2018年歳時記・『星の巡礼・こころに遊ぶ 』 Ⅲ
周防大島から「荘厳寺だより」が届いた。
住職 白鳥文明画伯の描く山桃の葉に抱きつく一匹の蟋蟀(こおらぎ)に己の存在をみる想い
である。
無常の風に誘われて、画伯の世界に遊ぶ幸せに、感謝である。
≪ 楊梅(山桃)も こころ通わす 虫の音や ≫ 實久 (楊梅=山桃)
―ようばい(やまもも)も こころかよわす むしのねや―
"Letter of Sougen-ji- Temple" arrived from Suou-Oshima in Yamaguchi Pref.
It is a desire to see my presence in one cricket (koorogi) clinging to the leaves of the mountain peach painted by the Priest Fumiaki Shiratori , Artist.
I am thankful for being invited by an impermanent wind to play in his art world.
中村柊介君に似顔絵を画いてもらった。素朴な一枚のスケッチが大切な人生の思い出になりそうである。
≪ 似顔絵も わがレプリカや 夏の影 ≫ 實久
―にがおえも わがレプリカや なつのかげ―
似顔絵と云えば、2001年9月19日モスクワの画家ネフラソフ・ワーレリーに画いてもらった写実的なスケッチが残っている。懐かしい一枚である。2014年2月1日イースター島への船旅にて星野氏による73歳の似顔絵も出てきた。
≪ 神化身 死者蝶になり 不死の夏 ≫ 實久
―かみけしん ししゃちょうになり ふしのなつー
蝶は神の化身であり、死者は蝶に化身して帰還する
蝶は霊魂・不死・復活の象徴である
The butterfly is the incarnation of God, the dead take it back to the butterfly and return. Butterfly is a symbol of soul, immortality, resurrection.
―ありあけに がくちんもくや なつがすみ―
In the summer months, Unzendake which was the hidden Christian of the Shimabara Peninsula, floats silent figure in the Ariake Sea.
この夏、原城址のふもとにある浦田漁港を「潜伏キリシタンの里探訪」での三日目の露営地とした。
テントからは、夕やみ迫る雲仙岳・普賢岳の美しいシルエットを眺めることができる。
深夜1:04am、テントから這い出して星空を眺める。海風が生暖かく頬をうつ。近くの防波堤では夜釣りの影がふたつ夜灯に揺れている。
今から381年前、この地・原城址で農民たちが圧政に抗議し、籠城して鬨の声をあげた。その必死の声が、雲仙の普賢岳に木霊してここ露営地に聴こえてくるようだ。
≪ 鬨の声 岳に木霊す 夏野営 ≫ 實久
―ときのこえ がくにこだます なつやえい―
381 years ago, farmers protested to bask a castle against power politics. Its frantic
voice seems to be heard in the spotlight here at Unzen-Dake.
比良山系に今日、ようやく初冠雪、昨年に比べ21日遅いとのこと。これから、寒い冬がやって来ます。(写真は木戸集落より蓬莱山のびわ湖バレーを撮影)
≪ 仰ぎ見し 比良も温暖 遅き雪≫ 實久
―あおぎみし ひらもおんだん おそきゆき―
Today, the Haira mountain finally snowed, it is 21 days late compared to last year.
From now on, a coldwinter will come
ここは、原城址の麓、浦田漁港のベースキャンプである。
遠く、闇に光る島原の小さな灯火が揺れ、ここ原城址の大手門近くにある櫓(テント)に向かって信号を送っているではないか。どうもこちらの戦況を案じてのキリシタン仲間からの信号のようである。こちらもボーイスカウト時代に習った灯火によるモールス信号で応答した。
『われら勇敢に戦えり。城内に至っては、婦女子みな一心に義を求めてデウスに祈りおる。戦い一日終え、明日は全滅すれど、われらの一揆の目的をわれらの命に代えて達成しえたことを喜ぶなり。どうか、後々のことをお頼み申し上げ、皆様方の祈りにたいして感謝の気持ちを送り、われわれ籠城組の最後の灯火通信としたし。キリシタン諸子の神のご加護あらんことを、召されゆくわれら一同死してのちも生きて祈るものなり。復活してまた共に戦おう。さらば友よ!』
≪ 祈り人 死して生きるや 夏の夢 ≫ 實久
―いのりびと ししていきるや なつのゆめ―
祈り合い、共に死んでのち、生き返って平和な世界に生きることは、夏の夢だろうか
Is it a summer dream to live in a peaceful world after living back on praying and dying
together?
≪ 笑う牛 五島も送る 雨上がり ≫ 實久
―おくるうし ごとうもわらふ あめあがり―
After the rain, we took off the Gotou-cattle and got on our way home after the "hidden
Christian village- the Gotou Islands".
2018年歳時記・『星の巡礼・こころに遊ぶ 』 Ⅳ
につづく