shiganosato-gotoの日記

星の巡礼者としてここ地球星での出会いを紹介しています。

2017『星の巡礼・奥の細道紀行-句碑の前でわたしも一句』 42

2017『星の巡礼奥の細道紀行-句碑の前でわたしも一句』 42
 
 
■ 親不知・子不知 ⇔ 市振を自転車で走る②

◎恐れながらわたしも一句

㉔親不知(おやしらず)    
  親不知 「子不知や 漁り火頼る 親不知」
    (こしらずや いさりびたよる おやしらず)
     
㉕市振    
「一家に 遊女もねたり 萩と月 」 市振・長円寺 「孤の村や 埋もれし魚網に 蝶とまり」
(ひといえに ゆうじょもねたり はぎとつき)   (このむらや うもれしあみに ちょうとまり)
    「市振や 午睡の最中 われ独り」 
    (いちふりや ごすいのさなか われひとり)
    「市振に 翁もみたり 漁り火や」       
     (いちふりに おきなもみたり いさりびや)



芭蕉  「一家に 遊女もねたり 萩と月 」  (ひといえに ゆうじょもねたり はぎとつき

            解説: そのまま詠んで楽しみ、味わうのがいい


恐れながらわたしも一句

實久  「孤の村や 埋もれし魚網に蝶とまり」  (このむらや うもれしあみに ちょうとまり)


          意味: 今は関所もなく、行き交う旅人もいない埋もれた漁村の浜にうち捨てられた網、そこに一匹の

                    真っ白な蝶が艶やかにとまっているではないか、静かだ、消え入りそうだ


◎親不知・子不知(おやしらず・こしらず)


国道8号線にある子不知トンネルをぬけると、鬼が鼻にJR「日本海ひすいライン親不知駅」がある。


その先の「道の駅親不知ピアパーク」(親不知漁港)をすぎ、しばらくすると北アルプス日本海に突き出ている断崖絶壁の「親不知」に出る。


国道8号線の「天嶮トンネル」入口、右手に天嶮親不知をいく当時の旅装束の人形が目に付く。ここに公衆トイレ完備の無料駐車場がある。


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国道8号線「天嶮トンネル」東口に親不知をいく旅人     
 

その上にある「親不知観光ホテル」には、日本アルプス縦走の起点として度々投宿している。ここホテルの脇から断崖を下って日本海に立つことができる。 手すりのついた石段を下りて行くと日本海の荒波が打ち寄せる岩場に出る。 2013年4月17日、日本アルプス縦走時には太平洋の静岡浜の海水を、ここ終着地点である日本海の親不知の岩場で献水して、縦走を締めくくったものである。


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日本縦断時も親不知に立寄っている(2012)                  親不知海岸(2017奥の細道


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 日本アルプスを縦走し親不知海岸で万歳を叫ぶ (2013)

親不知(おやしらず)は、新潟県糸魚川市の西端に位置する崖が連なった地帯である。正式には親不知・子不知といい、日本海の海岸の断崖絶壁に 沿って狭い砂浜があるだけで、古くから交通の難所として知られるところである。


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北アルプスは断崖となって親不知で終わる


◎合唱曲「親知らず子知らず」では次のように歌われている。

荒磯(ありそ)の岩陰に 苔むした地蔵が
かすむ沖を じっと見つめている

子を呼ぶ母の叫びが聞こえぬか
母を呼ぶ子のすすり泣きが聞こえぬか

旅に病む父親の下へと
心を急がせた 母と子に 
北涙(ほくめい)の怒涛が グワッと 爪を立て
次々に 二つの悲しき命を 奪い去ったという
怒涛は何を怒ったか
その怒りを 何故(なにゆえ)に悲しき母と子に向けたか

子を呼ぶ母の叫びが聞こえぬか
母を呼ぶ子のすすり泣きが聞こえぬか

悲しき人を さらに悲しみで追い打ちするを
人生というか
悲劇に向かって挑む喜劇(もの)
運命の神は 憎むか

(かもめ)は鳴きつつ飛び交い
海を潜り波を滑る 鴎の歌の悲しさよ

じっと見つめる 苔むした地蔵も
夕暮れる
親不知子不知の沖も
茫々(ぼうぼう)夕暮れる

 
またホテルを回り込んでいくとトンネルができる前の旧国道8号線が廃路となり、「コミュニティロード」として保存されている。
車をここ「親不知観光ホテル」に隣接する無料駐車場に停め、自転車に乗り換え、市振までの断崖をくり貫いて作られた洞門(落石・雪崩 防止のため,道路に接した擁壁を用いて設けたトンネル状の工作物)を往復することにした。 もちろんこのほかに天嶮・親不知をぬける歩行者専用の歩道はない。

国道8号線上の断崖洞門なので急なカーブが多く、それも急な坂道がつづく。 自転車や歩行による通行には、車に対し十分な注意が必要である。ヘルメットと前後の点滅反射灯(フラッシング・ライト)をお忘れなく。あまりにも危険なので徒歩はすすめられない。洞門内には歩道・自転車道はない。

親不知・子不知は、徒歩や自転車通行は現在でも難儀なところである。 足下ではなく、車に対し始終気を引き締める難所なのである。

天嶮トンネルの東の入口にあり、親不知観光ホテルの後方から始まる約700mほどのコミュニティロードをへて、先ほどの危険な洞門ロード(国道8号線)を5KMほど行くと国道を離れ右へそれる道がある。市振の集落、昔の「市振の関所」跡への入口である。

コミュニティロードを親不知観光ホテル脇を自転車で走りだすと、まず展望台から見る親不知の絶壁沿岸の景色がすばらしい。また、天気が良ければ遠く佐渡島能登半島が望見できるという。旅人泣かせの親不知も現代からすると絶景ポイントになってしまうのだから、近代土木技術の恩恵に浴していることに感謝せねばならない。

その先に、日本の近代登山に貢献した英国人宣教師ウオルター・ウエストン像がある。

彼は、日本各地の山に登り『日本アルプス の登山と探検』などを著し、日本アルプスなどの山及び当時の日本の風習を世界中に 紹介した登山家である。

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ウオルター・ウエストン像                         旧国道8号線はコミュニティロードとして保存

 
像の左先、断崖の大岩に明治16年の国道開通記念に刻み込まれた「如砥如矢」(とのごとくやのごとし)、「天下の険」を見上げる。


その意味は、「(この道路は)砥石のように平らで、矢のように真っ直ぐである。」と賞賛したものである。


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「如砥如矢」                                                          「天下の険」

 
コミュニティ・ロードの北側、日本海側は天下の険、眼下に白波をかぶる親不知の海岸が見え隠れする。

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親不知観光ホテル直下にある親不知海岸


 

この散策路・コミュニティロードは、国道8号線天嶮トンネルの西口に出る。


ここから自転車にとって最悪の危険な洞門国道がつづく、ヘルメットの緒を締めなおし、前後の警告点滅灯を確認し、こころしてペタルを踏み出した。ここは「天下の険・親不知」であることを反すうし、気を引き締めなおしたものだ。洞門の限られた空間のなかで大型トラックに追いかけられ、まえから迫られる様は、天下の険に劣らず冒険的であり、スリリングであり、そして危険でもある。


◎市振を自転車でまわる


天嶮トンネルより約4km先で国道8号線を右に入ると、市振集落の東端にある「海道の松」に出会うはずであったが、残念ながら昨201610月の暴風で姿を消していた。 いつの日か、何代目かの「海道の松」が育つことを願っている。

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市振は左の国道8号線より右へ入る                    残念ながら海道の松の姿はなく、案内板だけが立つ

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往年の市振「海道の松」(1999年・人里の巨木たちより)


唯一の集落の目印だっただけに、旅人ひとりひとりに語りかけていたであろう「海道の松」を想像する。親不知からきた旅人には「お疲れさん、大変だったでしょう」と、親不知に向かう旅人には「気を引き締めて、行ってらしゃい」と声をかけていたであろうと。






                   市振を自転車でまわる②につづく