2024『星の巡礼 蓬莱山再会』
星の巡礼者 後藤實久
4年前の恒例<蓬莱山雪中キャンプ>において、暴雨風なみの「比良八荒おろし」(3月比良山系に吹き荒れる
季節風)に遭遇し、テントごと強風にあおられ崖っぷちまで吹き飛ばされ、危険を感じて急遽下山した西方浄
土のお山<蓬莱山>に、ゴールデン・ウイーク中、再度挑戦させてもらう機会に恵まれた。
2020年当時、高齢とはいえ体力・知力共に充実し、70代最後の<大峯奥駈道縦走>6泊7日の準備訓練もかね
ての雪中キャンプであった。
それ以来、80代に入って挑戦した<奥比良縦走>での天候急変による体力的衰弱を恐れての途中下山を最後に
「ロング・トレッキング縦走卒業」を宣言したものである。
登山やロング・トレッキングから引退して以来、ここ数年の急激な体力の衰えに、不安を感じだしていた。
いつかは山歩き再開をと思いつつも、ここ2年程老人生活に入って、コンピューターに向かい過去の記録を
ブログに綴る日々が続いていた。
ただ、近くの公園での階段歩き、斜面の横歩き、坂の上り下りを採り入れ、山歩き再開に備えてはきてい
た。
その夢、山歩きを実現すべくこのゴールデン・ウイークに<蓬莱山再会>を果たすため、パートナーの助けを
えて、金毘羅峠経由、蓬莱山頂(比良山系)に向かった。
■ 09:45 <金毘羅峠登山口> (標高658m) スタート
金毘羅峠登山口へは、JR蓬莱駅より徒歩1時間20分ほどかかる。
この日は、車で金毘羅道(林道)を登山口近くまで上り、空き地に駐車し、登山口に向かった。
林道は、登山口に近づくにつれ、落石多く、窪地もあり、路肩も弱くなっていたので20分程手前空き地に駐車
しての歩きとなった。
蓬莱山金毘羅峠登山入口にて(標高658m) スタート
山を彩る緑のコントラストのなんとみずみずしいことか。
常緑樹の緑濃き姿に、新緑の衣が寄り添うように重なるその美しい事、こころを和ませてくれる山の風景で
ある。
新緑の太陽に向けるなんと幸せな横顔なのだろうか。
命みなぎる新緑を見ていると、こちらの体にもジワーっと力みなぎるのを感じる。
この沈黙の森に、流れ響き、奏でる山水の音が、平和な息吹と、調べとなって耳をくすぐる。
久しぶりの山歩きに、山の精霊たちも<WELCOM>と喜んでくれているようである。
新緑を楽しみながら金比羅峠に向かう
一歩一歩、老いの歩みを、息を整えながら登ると、山の小さな生き物たちの様子が見えてくる。
ゴジュウガラが、枝から枝へ飛び移りながら、こちらの様子をうかがったり、草の影から飛び出した丸々太っ
たトカゲが、赤く細い舌をちょろりっと出しながら、こちらを見上げて何かを言いたそうに首をかしげて居た
り、大きな蟻がおにぎりの匂いに惹きつけられて登山靴を這い上って来たりと、小さい命の躍動する姿に惹き
つけられた。
■ 11:30 金毘羅峠到着
峠に到着する少し前から、久しぶりの急登に、またゴロゴロした沢山の石や岩に足をとられ、股関節に痛みを
感じ始めていた。
下りの這い這い、ひとの手を借りての下山が頭によぎった。
この地点で、さらに股関節に負担のかかる山頂への急登をあきらめ、峠で体を休めて、下山に備える決断をし
た。
この間に、パートナーが単独で蓬莱山登頂を終えるのを見届け、祝ってやりたかったのである。
パートナーには、いつも老登山者の世話をやかせ、登山の楽しみを奪ってきたことへの返礼の気持ちもあっ
た。
金毘羅峠の2024年5月現在の近況をも、報告しておくことにしたい。
2018年9月4日九州北部豪雨をもたらし、近畿をも直撃した大型台風18号は、京都北山や比良比叡山系はじめ
近畿山域に倒木による甚大な被害をもたらした。
あれから6年が過ぎ、ほとんどの登山路の回復を見てきたが、びわ湖バレイ経由蓬莱山への<金毘羅峠木戸ル
ート>は、いまだ手つかずの倒木地帯が残されているのが現状である。
原状回復は見込めていないように見える。
もちろん、立入禁止である。
ここ<金比羅峠>で、股関節の痛みを和らげ、休憩を兼ねて昼食のお握りとソーセージをいただくことにし
た。 匂いに誘われて、どこからか、小鳥や蟻が集まって来て賑やかである。
そっとお裾分けを木の根っこに置いてやった。
たぶん、あとで楽しく宴会でも開いてくれていると想像するだけで愉快になる。
<金毘羅峠>
2024年5月2日現在<ゴンドラ山麓駅ルート>は倒木により立入禁止
懐かしい<金ピラ峠>にて
驚いたことに、この峠のすぐ側まで、崩落が迫り、大きな黄土が口を開き、その痛ましい形相を見せていた。
大変残念だが、ここ金毘羅峠もまた、崩落のなかに消え去る運命にあることに心を痛めたものである。
すでに峠前後の山道(ルート)は、ルート変更を余儀なくされ、ロープを張って登山者への安全配慮がなされ
ていた。
ここ金毘羅峠は、安全登山のための<レスキューポイント 金ピラ峠3>というヘリコプターによる遭難救助
地点でもあったが、現在ではその存在すら危うくなりつつある。
この地図は、2021年作成であるが、当時よりも更に崩落は進んでいるようである。
また、びわ湖バレー側の金毘羅峠経由蓬莱山登山ルートは、いまだ原状回復がなされておらず、通行不能・
立入禁止である。
ここ金毘羅峠の周りには、イワカガミの群生が見られ、そのお花が鮮やかに咲き誇っていた。ピンクの花に
癒されている間に、股関節の痛みや疲れも和らいだようである。
ここまで来て蓬莱山登頂をあきらめてたまるかと、老人の意地がまた頭をもたげてきたのである。
下山後、何度も経験したルートであるという安易さからくる老人の気ままな行動変更、山頂に少しでも近づ
きたいという願望を抑えられずに行動を再開したことを反省したものである。
だが、この時はイワカガミの花に勇気づけられつつ、途中、パートナーに出会うまで登ることにした。
金ピラ峠付近に咲く可愛いイワカガミ
青年二人が、上って行ったのと、老登山者が単独で下山してくる姿を見て、さらに完登精神に火が
付いてしまったようである。
さっそく、山頂の写真を送ってきたパートナーに、峠の休憩を切上げ山頂に向かって登り始めたことをスマホ
で伝え、パートナーに出会うところまで上ることを伝え、慎重に歩を進めた。
金毘羅峠は<レスキュー・ポイント>でもある 金毘羅峠付近の崩落が著しく進んでいた
崩落の激しい金比羅峠付近には、ロープが張られ新ルートが出来ていた
■ 12:45 下山開始 (蓬莱山頂直下のルート上、標高1135mより下山)
下山中のパートナーとは、蓬莱山頂直下のルート上、恒例の雪中キャンプ実施地点付近で無事再会し、山頂は
次回の楽しみに残すことにして、おとなしく引き返して、<金毘羅峠登山口>に向かって下山した。
山頂風景の写真は、パートナーの協力による。
蓬莱山頂にある<びわ湖テラス>
ゴールデンウイークで賑わっていた
<蓬莱山頂?> <一 一 七 四 m>
<朽ち果てた蓬莱山頂木製標識一部識字不明>
朽ち果てた<蓬莱山頂木製標識全体> <蓬莱山頂1774m>と<ルート標識>
右:小女郎ケ池 / 左:ゴンドラ山頂駅
<蓬莱山頂石碑> <蓬莱山頂方角碑>
蓬莱山頂<一等三角点>1173.9m
金毘羅峠ルート蓬莱山直下でパートナと合流し下山を開始した
■13:50 <金毘羅峠登山口> 標高680m地点に下山
ゴールデン・ウイークの陽気に誘われて、諦めかけていた山歩きができたことを喜んでいる。
やはり、山が呼んでいるような気がした。
山が待ってくれていたことにこころから喜んだ。
こころや体に、山を宿し、命そして魂の再生に触れたことに感謝している。
心地よいリフレッシュ、約5時間の山歩きを楽しませもらった。
次回の蓬莱山再会を誓って下山した。
《麓なる 家より拝す 蓬莱の 西方浄土 祈り届けし》 實久
―ふもとなる いえよりはいす ほうらいの さいほうじょうど いのりとどけし―
<参考資料編>
■ 『山歩き行程表』 (地点/距離/時間) ― 参考例
老人の山歩きの場合、自分の体力や運動量に合わせた上り下りの歩行ペースをもとに、おおよその
通過予想時刻を書きだし、所用時間から帰宅時間を割り出しておくことをお勧めします。
「登山届」に記入する『山行行程表』にも利用します。
この行程表で、今回の山歩きの休憩・昼食を含めた全所要時間5時間15分、総距離は6000m(6km)程で
あることが分かり、何時に出て何時までに車に戻ったらいいか(老人としては山が暗くなり出す前の最終
午後4時前後が目安となります)、どれくらいのところで休憩すべきか、などおおよそのペース配分など
を前もって知ることができます。
時間配分がわかるとゆとり(余裕)も生まれ、危険回避の大切な要因になります。
<駐車地点>09:00発 ➡(1500m/20分)➡ 09:20着<金毘羅峠登山口>09:30発 ➡
(700m/90分)➡ 11:00着<金比羅峠>11:05発 ➡(800m/50分)➡
11:55着<蓬莱山頂・昼食>12:27発 ➡(1500m/83分)➡
13:50着<金比羅峠登山口>14:00発 ➡(1500m/15分)➡ 14:15着<駐車地点>
もし興味があれば、『山歩き高低表』を作ってみてください。
縦軸に標高、横軸に距離を作り、国土地理院地図に表示される標高と図った距離を記入してみてください。
いろいろな情報を教えてくれますよ。 どの標高で急勾配になるとか、何キロ先のこの平らなところで食事を
とろうとか、想像を膨らませてみてください。
楽しい山歩きが約束されることでしょう。
また、時間があれば<山歩きの記録>となる『野帳』にも挑戦してみてください。
書き方は、<関連ブログ編>の中に出てくる『ルート高低表』・『野帳』を参考にしてみてください。
■『老人の山歩き・携行品標準リスト』 (80歳以降)
標準リストなので、各老人の山歩きスタイルによりリストの増減があるものと思われます。
まず、老化からくる滑落・転倒、道迷い(オーバナイト含)、天候異変による避難を含めたあらゆる遭難に対
する最低の備えは常に必要です。
一度準備した携行品は、以後の山歩きにも使えるので、補充した後、リュックに入れて保管すると便利です。
ここでは、80歳以上の高齢者を対象としていますので、かならず同伴者がいることを前提にしています。
同伴者とも相談し、携行品の分担を検討してみてください。
ポーチ収納品: 地図/磁石/メモ用紙/赤黒ボールペン/登山届/山歩行程表(地点/距離/時間)
身分証明(免許証or健康保険証)/GPS付携帯(カメラ兼)
豆照明/笛/簡易老眼鏡/水溶性ティッシュ/高度計/時計/歩数計/持病薬
バッテリーチャージャー/山歩き保険
山歩き用品 : リュック小/カバー/ヘッドランプ/ヘルメット/帽子/軽登山靴/ストック2本
雨具orポンチョ/プルオーバー/靴下/シャツ2/タオル/タイツ/半ズボン
ハンカチ/水(0.5Lx2)/昼食(お握り大x2)/非常食(ビスケット/飴/チョコ)
非常用(防寒用アルミシート/笛/鈴/反射鏡/ライター/リターン用赤テープ)
緊急セット(個人情報/緊急連絡先/三角巾/バンドエイド/化膿止)
行動食(飴/チョコ)/補修セット(ガムテープ/銅線)/
ファスナー付ナイロン袋(ゴミ/トイレ用)
<使用地図関係> 山と高原地図<比良山系>昭文社 1/30000
国土地理院地図<比良山>1/25000
(左から磁石・登山届・大和高原地図・ペンライト・笛・鈴・国土地理院地図)
老いてもなお、山歩きを楽しみたいものです。
山歩き保険にも加入し、万全の準備を怠らず、おのれを鍛え、みなさんに迷惑をかけないように同伴者のもと
で、老後の山歩きを楽しみたいと思います。
2024『星の巡礼 蓬莱山再会』
完
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<関連ブログ編>
shiganosato-goto.hatenablog.com
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<登山届・野帳・高低表関連参照ブログ>
■ 鯖街道<針畑越えルート縦走日記>➀~④