― 福江港ターミナル ⇔ 奈留島・江上天主堂 ― 走行距離 21km
早朝の福江港は、常頭鼻をめざす漁船が次々と帰港する。
漁船の周りには無数のカモメが群れをなし、漁船から投げ出される雑漁めがけ、海面めざして急降下する様は圧巻である。
福江漁港は、漁船で埋め尽くされ、豊漁にわき活気に満ちている。
福江漁港の常頭鼻辺りは、絶好の釣りポイントであろうか、老若男女それぞれおもいおもいに釣り竿を垂らしている。
朝陽を拝しながら、釣り人を観察するのも楽しい。釣れない人も、釣れるひともわが釣り人生を楽しんでいるのがいい。釣れる人は次々と魚をゲットするが、釣れない人はなにも釣れない。
しかし、みな真剣に獲物に向かっている姿がいい。
竿がしなり、引き上げた瞬間、鯵は空中を飛び釣り人の手に吸い込まれる、すばらしい呼吸だ。
奈留島行の「フェリーオーシャン号」が出航するまでの間、福江の街をぶらりと散策した。
築城当時は、海に面した海城であったようであるが、今は街中にあり、城前のコンビニ・ポプラとのコラボが時代性を感じられて面白い。
五島市福江地区の中央に福江城址があり、幕末の1863年に福江藩最後の藩主五島盛徳が完成させた五島藩主の居城跡である。
第30代盛成公の時に黒船の来航に備えて造られた。城壁の三方を海に囲まれた日本唯一の海城である。
江戸幕府最後に築かれた我が国で最も新しい城であるが、明治維新とともに築城9年にして解体された短命の城であった。
現在の五島カトリックの先祖は、寛政9年(1797)弾圧を逃れて移民した大村藩農民の子孫であると言う。
全盛期を迎えたが、徳川幕府の厳しい弾圧で絶えたと言われる。
<福江港 ⇒ 奈留港> 「フェリーオーシャン」 五島旅客船・福江港二号桟橋より出航 08:05
近隣の島々には一号桟橋と二号桟橋よりフェリーが出航する。桟橋を間違えないようにターミナルの掲示を確認しておくとよい。
奈留港へは、福江港二号桟橋より「フェリーオーシャン」(396トン)3便(08:05/13:00/17:15)が就航している。
五島旅客船<福江~奈留>間の片道乗船券は790円、自転車260円である。
「フェリー オーシャン」は、福江港より北進し、久賀島と末津島の間をすり抜けて奈留港に入港する45分間の船旅である。
奈留港には08:50に着き、港ターミナルの観光案内所で江上天主堂に関する情報を入手する。
まだ朝だというのに厳しい暑さである。濡らしたTシャツを頭からかぶり、江上天主堂に向かい県道168号線を北西に向かって自転車を走らせた。
「フェリーオーシャン」(396トン/五島旅客船提供) 車載甲板と愛車ワイルド・ローバー号
奈留町の基幹産業は漁業であって、隠れキリシタンのほとんどは漁業に従事している。
現在、全住民のうち、1割の方がカトリック信徒であると言われている。
奈留島をはじめ五島の過疎化は深刻なようだ。奈留全体の中心は葛島(かずらじま)教会であったが、過疎化による奈留島への集団移住により葛島から祈りの声が消え、この移住者たちがここ「奈留カトリック教会」を建てたとある。
カトリック奈留教会を後にして、県道68号線をさらに西北へ走らせ、「多賀真珠」で知られる松山漁港を過ぎると、長い遠命寺トンネルを抜ける。そこには、江上天主堂が見下ろす明るい大串湾が目に飛び込んでくる。
奈留島の西端近くに位置し、かつては中五島の中心的な存在であったが、過疎化による信徒の減少のため現在は主任司祭はおらず、島の中央部にある奈留教会の巡回教会となっていると、教会を管理されている方から説明を受けた。
現在は、韓国の神父が月1回の司祭をつかさどり、江上教会の信徒1軒に奈留教会の信徒も加わりミサを行っているそうである。19世紀外海(そとめ)地域から各地へ広がった潜伏キリシタンの一部は、はじめ奈留島の北に位置する無人島であった葛島に入り、その後、奈留島の人里離れた海に近い谷間に移住し、自分たちの信仰をひそかに続け、解禁後はカトリックに復帰して地勢に適応した江上天主堂を建てた。
江上天主堂は、禁教期の集落との連続性を高く示し、風土に溶け込むように立地するとともに、在来の技術が用いられた教会堂の代表例であるとされる。長崎・天草地方に建てられた教会堂の中でも「潜伏」に転機が訪れ、潜伏キリシタンの時代の終わりを迎えたことを最も端的にあらわす教会堂としても知られている。
先ほども触れたが、現在信徒1軒という。
奈留町白這 松山漁港/多賀真珠養殖中 長いながーい遠命寺トンネル
江上天主堂正面
<またまた蝶・マンキアゲハに再会>
奈留島では、江上天主堂前と、県道168号線沿線白這バス停近くの花畑で蝶・マンキアゲハにであった。
マンキアゲハとの出会いについては、すでに幾度も取り上げてきた。別章を参照願いたい。
江上天主堂で出会ったマンキアゲハ 奈留島・白這付近で出会ったマンキアゲハ亜種
奈留島での江上天主堂訪問を終え、同じ道を引き返して奈留港に戻る。
奈留港14:15出航の五島旅客船「ニューたいよう号」(乗船代1050円含自転車)に乗船し、福江港に14:50入港する。
奈留港⇒福江港間の「ニューたいよう号」のスケジュールは、奈留港発08:40/10:50/14:15の三便である。
福江港に戻って、ターミナル内にある五島の名物「五島うどん」を食した後、明日の帰宅を前に、温泉につかり体を洗っておくため、福江の街の南にある鬼岳温泉(五島カンコナ王国・700円)に出かけた。
温泉は鬼岳(標高315m)という高原にあり、有名な五島牛の牧場が広がるのどかな田園風景が広がる。
また五島市は、「電気自動車の走る島」と謳い、地球温暖化対策に熱心に取り組んでいる自治体である。「エコー五島」のいたるところで電気自動車を目にするという徹底ぶりである。
鬼岳温泉へは高齢サイクリスト泣かせの急な坂が続く、45分かかった上りも、帰りは時速40kmにも達する危険な速度で福江港まで一気に、12分で駆け下りることになった。とんでもないハイエイジ いや クレイジー・サイクリストである。
自転車は心にゆとりをもってスローサイクルを楽しもう。ただ、雨が降りだして、心急いだことは確かであるが。
につづく