『南極大陸』ブログ・スケッチ展
『南極に立つ』 少年時代にドキュメンタリー「白瀬中尉の南極大陸」を観て以来、
夢のなかで温めてきました。
2007年2月、南米大陸一周の旅に出かけ、ウシュアイア(アルゼンチン)に
滞在したおり、この地が南極大陸クルーズ船の母港であることを知り、
足で歩くバックパッカー(放浪者)であることを忘れ、高額のツアー代を
き集めて夢を実現させました。
2007年2月20~3月2日 Quark Expeditions社催行の
<南極クルーズ11日間・ANTARCTICA EXPEDITION CRUISES>
(乗船客130名・乗組員87名)に参加し、
ORLOVA号(4376トン/探検砕氷船/ロシア船籍)に乗船して南極大陸を周遊した際の
水彩スケッチ集です。
コロナ禍、南極大陸のスケッチ集をお楽しみいただければ幸いです。
なお、作品をクリックしていただければ、拡大し、見やすくなります。
コロナ禍の志賀の里
弧庵にて
2021年春
星の巡礼者 後藤實久
南極大陸 ウエッデルアザラシ牝<Elephant Seal♀> (デタイエ島) と 南極観測基地
南極大陸クルーズ
QUARK社シンボルマーク
南極大陸ツアー砕氷船ORLOVA号 南極出発前のウシュアイアにて
➀~⑮寄港地順を示す
詩『ああ君ありて われあり』 南極に坐して
ウシュアイアを出航、ドレーク海峡を渡り南極に向かう
➀ 南極入口 ディエゴ・ラミレス島/Diego Ramirez Island <S56°29’-W68°44’>
ドレーク海峡/Drake Passage
南極大陸入口 ディエゴ・ラミレス島 (ドレーク海峡-大西洋)
スケッチをクリックすると拡大されます
ウシュアイア現地での南極ツアー申込・乗船は不可能に近い。何年も前からの予約制で、キャンセル待ちも幸運でなければ回ってこないのである。今回は、あるツアー会社の乗船者の中、ツアー代金の振込が出航日前日までなく、幸運にももぐりこめたわけである。乗船できるかどうか1週間待っての朗報であった。
130名の夢を乗せた砕氷船ORLOVA号は、翌日ドレーク海峡の荒波を乗り切って南極半島最先端にあるディエゴ・ラミレス島を左舷に観ながらペンギン島に向かった。
ディエゴ・ラミレス島 は、南米大陸最南端ホーン岬の南西約100キロメートル、ドレーク海峡に南北8キロメートルにわたって存在する島々である。南極大陸への半島入口にあり、雪も氷河も見当たらない中にアルゼンチンの南極基地がある。
南極半島入口にあるディエゴ・ラミレス島
② ペンギン島/Penguin Island <S62°06′-W57°54′>
南極大陸 王様ペンギン <King Penguin> (ペンギン島)
南極大陸 マカロニ・ペンギン雄 <Macaroni Penguin♂> (ペンギン島)
南極大陸 アデリ・ペンギン家族 <Atelier Penguins Family> (ペンギン島)
サウスシェトランド諸島内、キング・ジョージ島の東側に位置するペンギン島は直径約1.7kmのほぼ円形をした小さな火山の島である。1820年に英ブランズフィールド探検隊が海辺を覆う多くのペンギンを見た事からその名前がつけられた。
頂上の大クレーター外側のなだらかな斜面には、この時期(2月頃)、海辺近くでゼンツーペンギン、ウェッデルアザラシやナンキョクオットセイが見られる。
ペンギン営巣地から流れ出る栄養豊かな雪融けと長い日照時間で活発に行われた光合成により増殖した緑色の青海苔状のナンキョクカワノリもみられる。
ウェッデルアザラシ ナンキョクオットセイ
ナンキョクカワノリ(中央緑) ゼンツーペンギンたち
ゼンツーペンギンたちのお出迎え (ペンギン島)
東側にある小クレーター火口に水が溜り、内側斜面にはヒゲペンギンの営巣地が、外側の淵辺りではオオフルマカモメを見かけた。
オオフルマカモメ マカロニペンギン
ヒゲペンギン ゼンツーペンギン
③ ハーフムーン島/Half Moon Island <S62°36′-W59°55′>
南極大陸 ハーフムーン島 <Harf Moon Island> サウス・シェトランド諸島
アルゼンチン・カマラ南極基地がある (スケッチをクリックすれば拡大できます)
南極半島の沖合に連なるサウスシェトランド諸島の中で二番目に大きな島リビングストン島にある広いムーン・ベイの入り口近くに三日月型をした全長2kmのハーフムーン島がある。
1820年2月にアメリカ人オットセイ猟師ナタニエル・パーマーが毛皮を求めてここに初めて上陸している。
いまでも毛皮を塩漬けにした当時の樽用たがや竿の切れ端やボート・小屋の残骸が残されている。
アルゼンチン カマラ南極基地を訪問
ゾディアック・ボートでハーフムーン島に上陸
④ フィッシュ群島/Fish Islands <S66°02’-W65°25’>
南極大陸の夜明け フィッシュ・アイランド <Fish Islands near Prospect Point>
フィッシュアイランドは、南極のグラハムランドの西海岸のホルテダール湾の入り口の北部に位置する小さな島々である。
フイッシュアイランドは、南のクリスタルサウンドと北のグランディディア海峡の間にあり、ルノー島の東にある。小島であるフィッシュアイランドには、推定4,000匹のアデリーペンギンが生息している。
南極の朝陽
美しいクリスタル氷塊のオブジェとペンギン
⑤ 南極大陸 デタイエ島/ De’taille’ Island <S66°52’-W66°8’>
南極半島 氷河や氷塊の輝くクリスタルの世界が美しいデタイエ島
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南極圏内クリスタル・サウンドからラレマン・フィヨルドへの入り口近くにある小さな島で、シャルコー(フランス)による第二次南極探検の際に発見された。
ここには1956年から国際地球観測年(1957~58年)を中心に使われていたイギリスW基地があったが、1959年の補給船が海氷のため近づけず、隊員達は基地を閉鎖した。必要最小限度の身の回り品と観測記録だけを持って海氷上を船までの47kmを犬ぞりで脱出したといわれている。
当時の観測生活そのままを窺がう事が出来る貴重な南極史跡である。
英国 旧W南極基地 (南極史跡として解放)
W基地より停泊中のORLOVA号を望む
閉鎖されたW南極基地の越冬用缶詰類 観測・通信用無線機
島への上陸は一度に50名まで、旧基地建物内には12名定員で10分以内となっている。周辺の岩島で営巣するアデリーペンギンやキバナウ、そしてアルバトロス(阿呆鳥)も見られる。
南極大陸 ウエッデルアザラシ牝<Elephant Seal> (デタイエ島)
廃墟となった英国南極科学基地<BASE W>
南極大陸 アザラシ牝<Weddell Seal ♀> (デタイエ島)
南極大陸 阿呆鳥/アルバトロス <Albatross> (デタイエ島)
➅ ニコ・ハーバー/Neko Harbor <S64°50’-W62°33′>
南極大陸 温暖化による氷河の崩落を目にする ニコ・ハーバー(湾) <Nico Harbour>
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ニコ・ハーバーは、南極半島で良く知られたパラダイス湾のすぐ北隣に位置するアンドヴォード湾内にある。ノルウエ―の捕鯨母船ニコ号の母港であったところから命名された。
パラダイス湾と並んで南極大陸上陸を果たす場所でもある。水際には緑やピンク色をした大きな花崗岩の岩肌が広がり、背後の大氷河の白と青い海の色がそれに調和して素晴らしい眺めである。
背後の氷河の丘に登ると、クジラがよく見られるアンドヴォード湾一帯の大パノラマを一望できる。
ニコ・ハーバーに流れ込んでいる氷河は頻繁に崩落するので知られており、この日も、大音響とともに氷河が崩れ落ちていた。
地球温暖化による未来を危惧する光景でもある。
氷河で囲まれたニコ・ハーバー 氷河とゼンツ―ペンギン
⑦ ダンコ島/Danco Island <S64°44‘-W62°37’>
南極大陸 ダンコ島付近の氷山・流氷の絶景 <Danco Island> Errera Channel
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Danco Island 案内表示板
南極大陸 ダンコ島Ⅱ <Danco Island> Errera Channel
上陸したデンコ島より砕氷船ORLOVA号を眺める
南極大陸 ダンコ島Ⅲ <Denco Island>
ゾディアックボートより砕氷船ORLOVA号を眺める
ダンコ島は,南極半島西海岸沖のエレーラ海峡の南部に位置する島である。ダンコ島は、ベルギーの南極探検隊のメンバーであるエミール・タンゴを顕著し、英国南極地名委員会よって命名されたとある。
ダンコ島周辺の氷河と氷塊の絶景 赤く見える雪藻(中央付近)
雪藻は通常は緑色であるが、南極の多くの光(紫外線)から身を守るために生成する赤いカロテノイド(写真中央付近の赤色)の量によって緑色または赤に見えるといわれる。
南極大陸 遊泳するゼンツペンギン (ダンコ島海域にて)
ダンコ島のゼンツペンギン
⑧ パラダイス湾/Paradise Harbor <S64°51′ W62°54′>
南極大陸 氷山に囲まれ、クリスタル氷塊が浮かぶ絶景のパラダイス湾 <Paladise Bay>
島には、上陸訪問したアルゼンチンのブラウン南極基地がある
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南極半島で最も美しいパラダイス湾に砕氷船ORLOVA号を停め、ゾディアックボートに乗換えアルゼンチンのブラウン基地に上陸した。周囲の山から幾筋もの氷河が流れ込み、氷の輝きは幽玄の世界に誘ってくれる。
湾の中にはルメール島(写真左)とブライド島(右)が浮かび、ゲーラーシェ海峡を挟んで雄大なフランス山(写真左端 標高2,825m)が見える。島には、チリのビデラ基地とアルゼンチンのブラウン基地があり、われわれはブラウン基地にゾディアックボートで上陸し、訪問した。
その後、基地背後の急斜面を登り、上からのパラダイス湾全体の見事な氷の世界を堪能した。またその裏のパラダイスハーバーに流れ込む氷河近くまでのゾディアック・クルージングでは南極のアイシング・ブルーという幻想的な色彩を楽しんだ。
アルゼンチン南極観測ブラウン基地に上陸し、背後の丘陵に立ちパラダイス湾を鑑賞
パラダイス湾を囲む絶景の氷河 氷河をバックに
上陸・クルージング用ゾディアックボート 南極大陸上陸前の靴底洗浄の徹底
ゾディアックボートでクルージング中 ゾディアックボートで上陸中
⑨ パラダイスハーバーのクリスタル氷塊スケッチ
パラダイス湾の美しい氷河(グレイシア)と氷塊(アイスキューブ)のスケッチを楽しんだ。
南極大陸 クリスタッル・アイスキューブ(氷塊)Ⅰ (パラダイスハーバーを囲む山々)
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ゾディアック・ボートよりパラダイスハーバーに停泊中のORLOVA号を写す
南極大陸 クリスタル・アイスキューブ(氷塊)Ⅱ (パラダイスハーバー)
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氷河から流れ出た氷塊のアイシングブルー パラダイスベイに流れ込む氷河と氷塊
⑩ ポート・ロックロイ/ Port Rockrey <S64°49‘-W63°29’>
(ゴウディール/Goudier Island)
南極大陸 ポート・ロックロイ博物館(旧英国観測基地) と
ポート・ロックロイ/Port Rockrey (ゴウディール島 Goudier Island)
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ポート・ロックロイは、捕鯨時代(19~20世紀)から自然の良港として多くの捕鯨船や毛皮ハンターの船が停泊し、広く利用されてきた。
母船式捕鯨が始まるまでは、ノルウェー、チリ、アメリカなどからの捕鯨船の避難場所として重宝され、今でも鯨の骨やとも綱の鎖などが見かけられる。
ここポート・ロックロイ湾にある小さなゴーティエ島には、第二次大戦中ナチスドイツの進出に備えて英国が設置した監視基地があった。
戦後、気象観測基地となり、電離層観測のために1962年まで使用されていた。
その後放置されていたが、南極条約による史跡に指定され、修復後1996年1月より史跡博物館として一般公開されている。
旧観測所(博物館)には、売店があり、ここで購入した絵葉書を南極記念切手を貼り、ポストに投函すると南極の消印で日本に郵送され、人気がある。
南極史跡博物館(旧英国観測基地) 通信室(ポート・ロックロイ史跡博物館)
史跡博物館内の売店 現役の南極ポスト
⑪ プレノー島 /Pleneau Island <S65°06′- W64°03′>
(ルーメア海峡/ Lemaire Channel)
南極大陸 象アザラシ雄 <Elephant Seal ♂> (プレノー島)
ルーメア海峡を南に抜けた右手前方に横たわるホフガード島のすぐ西隣に小さいプレノー島がある。
この島の水辺近くのくぼ地にゾウアザラシが換毛期を過ごす。
プレノー島/ルーメア海峡 ゾディアッククルージング 象アザラシ
⑫ プレノー湾/ Pleneau Bay <S65°06′- W64°03′>
(ルーメア海峡/ Lemaire Channel)
南極大陸 プレノー湾の絶景氷河/グレイシア― <Pleneau Bay – Glacier>
スケッチをクリックすると拡大します
プレノー湾は、青と白の水彩絵具で彩った風景画の中を航海しているような心豊かな、ファンタジーな気持ちにさせられる。プレノー湾でのゾディアック・クルージングは、南極の自然環境、特にアイスキューブや氷塊のオブジェに触れられる素晴らしいポイントでもある。
プレノー湾とその周辺で見られ、アイスバーグ墓地と呼ばれる氷山の大きさと美しさには息をのむばかりである。その険しい姿には、手付かずの野生の光景と神々しさが伝わってくる。
アイスブルーに輝く巨大な氷塊ブジェの絶景
⑬ ピータマン島/Petermann Island <S65°10′- W64°07′>
スケッチをクリックすると拡大します
ルーメア海峡を南に抜けたところに見えるのがピーターマン島である。今回の南極ツアーの最南端(南極点に一番近い)に位置する。ここは最近までゼンツーペンギンの南限営巣地と言われていたが、温暖化の影響で数年前からさらに南の島でも営巣が見られる。また、ナンキョクオキアミを中心に捕食するアデリーペンギンの数が激減しているという。地球温暖化は、ここ南極の生態系をも急激に変えつつある。
ここピーターマン島には南極避難小屋(フランス)がある。
ゼンツ―ペンギンもフラダンスで歓迎
船上より南極大陸の氷河鑑賞 ピータマン島上陸(砕氷船ORLOVA号をバックに)
⑭ デセプション島/Deception Island <S62°57′-W60°38′>
南極大陸 デセプション島 <Deception Island> ペンダラム入江 👆ここ砂浜温泉
旧捕鯨基地にある南極砂浜温泉とアザラシ達
スケッチをクリックすると拡大します
われわれを乗せた砕氷船ORLOVA号は、サウスシェトランド諸島の南端、南極では珍しい活火山の島デセプション島に立寄り、ウシュアイアに向かう。
1万年程前、火山の頂上部分が陥没し、そこに海水が流れ込んでできた馬蹄形の島である。1800年代中頃、オットセイの皮を求めていた船が嵐に遭い島に逃げ込んだが、出る隘路を見つけられずデセプション(欺き)の名を付けたと言われている。
最近では、1970年の噴火による火口が2つ残っている。その際、チリ―と英国の基地が火山灰によって埋もれてしまったという。今でも内海の数箇所で、地熱に海水が温められて波打ち際に水蒸気が立つのが見られ、われわれ乗船客も南極温泉につかることになった。もちろん希望者のみで、高齢者の代表として参加、『デセプション南極温泉体験者之証』なる認定証をいただいた。
アザラシ達の出迎えを受ける Welcome to Deception Island7
南極温泉から上がって極寒に耐える 南極の雪上にわが足跡を残す
南極大陸 マッコウクジラ夫婦 <Sperm Whale – Couple> (デセプション島付近)
デセプション島近海でクジラの遊泳が見られる
南極の氷河は地球温暖化による溶解・崩落でその姿を急激に縮小しつつある
心配そうに見守るペンギン達と人間
⑮ ウシュアイア(アルゼンチン)帰港 <S54°48’-W68°18‘>
デセプション島を後にした砕氷船ORLOVA号は、130名の乗客の夢を見果たし、波高いドレーク海峡を無事渡りきってウシュアイアに帰ってきた。
ウシュアイア(南極大陸クルージング母港) 2013年世界一周南半球船旅時スケッチ
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ここに、QUARK EXPEDITION社催行の<ANTARCTICA CLASSIC VOYAGE>2007年2月20日から3月2日、11日間の南極ツアーを終えた。
夢冷めやらない南極での多くの出会い、氷河や氷塊のクリスタルな幻想的な世界、人間を恐れず語りかけてくる愛くるしいペンギンやアザラシ達、船にいついつまでも寄り添う阿呆鳥/アルバトロスの飛翔、南極という夢物語の世界そのものの不思議な魅力、南極点の地下に宇宙人の基地があるというまことしやかな伝説、捕鯨や皮猟に夢を託した男野郎の冒険、南極のブリザードと戦い越冬した隊員たちの過酷な体験、そして放置され廃墟となった人間のぬくもりが消えた基地、地球温暖化により崩落が急激に進む氷河の悲しい姿・・・
南極は何時の時代にも人類に神秘な姿を見せ、魅了してきた。
しかし今、南極は地球温暖化により、その姿を変えつつあるという悲しい現実もある。
そのすべてを見せてくれた南極に立った自分を見つめた時、いついつまでもウシュアイアを去りがたいものにした。
わたしの撮った傑作写真<南極大陸伝説の宇宙人か>
2007年3月1日 現地13時25分 南極半島パラダイス湾で撮影
撮影者 後藤實久 < sanegoto1941@yahoo.co.jp >
南極より戻り、ホステルの食堂の窓より思い出の地ウシュアイアの風景を脳裏に刻んだ。
ホステル「AONIKENK」は、南極ツアー参加にあたってウシュアイアでの前後3週間の基地となった。
Sketched by Sanehisa Goto in ANTARCTICA
南極大陸スケッチ展にお出でいただき有難うございました。
『南極大陸』ブログ・スケッチ展
完