■ 第五区間 2013年9月2日~9月10日 <8泊9日>
槍ヶ岳を経て、中房温泉へ向かう
今回は百名山の完登を終え、『日本アルプス大縦走<太平洋⇒日本海>』を仕上げる記念すべき年でもある。百名山、日本アルプス大縦走のすべてに同行して、サポートしてくれたジープ(三菱J58製)に乗って登山口・扇沢にむかった。
すこし爺ケ岳からの下山のようすを回想しておきたい。白馬⇒扇沢縦走4泊5日は忘れえない山仲間とのつかず離れずの縦走行であった。その山仲間とは生涯忘れえないであろう青年・神忠輔氏である。氏もまた同じく後立山連峰を縦走していた。彼とのエピソードは別の項(第六区間後立山縦走記)でのべるとして、彼と一緒に下山した様子を書き記して今回の登山口である扇沢につなぎたい。
第5区間で親交を深めた山男 神君と・・・
爺ケ岳より扇沢への下山は雨のなか、寒さに震えながらの下山であったことを思いだす。同行の神君と霧雨に映える紅葉を楽しんでいたあまり種池山荘からの扇沢下山道をいきすぎてしまい、鳴沢岳2641m手前でルート間違いに気づいた。いそぎ駆けもどり下山を開始したが、2時間のロスはすでに下山道を暗くしていた。この時点で白馬にある民宿泊まりの神氏には扇沢からの最終バスに乗ってもらうために急いでもらうことにして下山途中で別れることにした。
わたしはバッテリが切れかかっているヘッドランプをたよりに転倒しながらの下山となってしまったが、ただ野営一式と食糧を持参していたので案外のんびりとかまえての下山であったことを記憶している。
神氏が扇沢バス停に着いてみたらすでに最終バスは発車しており、タクシーに乗ったそうだ。そして偶然にも下山口・爺ケ岳登山口で神君の乗ったタクシーと僕は出会ってJR信濃大町駅への移動と相成った。再会と偶然を喜びあったことは言うまでもない。あれから1年、日本アルプス大縦走の最終接続縦走≪扇沢⇒槍ケ岳⇒中房温泉≫をなしとげることとなった。
一夜を扇沢駐車場で過ごし、早朝4時45分ヘッドライトの明かりをたよりに針ノ木登山口にむかう。
この<扇沢⇒槍ケ岳⇒中房温泉>縦走にあたっては、前年暮れの脳梗塞発症にともなう右頸動脈へのステント挿入手術前に実行して担当医をあきれさせたというエピソードがある。なぜならば縦走後、一週間で手術の日を迎えたからである。担当医から、手術には再発症の危険性がともなうと脅かしがあったから、縦走決定には悲壮なる決心が必要であった。
烏帽子岳から水晶小屋のあいだに険しい岩場が続くが、ここで滑落しかかって左ひざを強打し擦り傷から血が噴き出して止まらない。手術前のため血液をさらさらにし、血液が固まるのを防ぐ薬・プレタールと、血の流れを良くする薬・ブラビックスを飲んでいたからである。
流れ出た血は、凝血せず空気に触れどんどん血膜のうえに何層もの真っ黒な血膨れを作り上げていく。グロテスクな
寒天状の血の塊が不気味である。それもショートパンツだから一層めだった。この一件をのぞき快適な縦走行を楽しんだ。
≪登山届からみた登山計画≫
⇒喜作新道⇒表銀座縦走⇒燕岳⇒合戦尾根⇒中房温泉
縦走者名 : 後藤實久(ごとうさねひさ)・73才・男・単独行・血液型・住所
緊急連絡 :自宅電話・本人携帯・携帯メール・e-mail
縦走期間 :上記参照
縦走形態 :全泊山小屋利用(水補給・全食事含む)
携行品 :ストック・ヘルメット・軽アイゼン・ツエルト・GPS携帯電話・雨具
ヘッドライト・軽シュラフ・緊急用水食糧2日分・救急用品ほか
エスケープ・ルート:
2013 宿泊小屋 第五区間縦走山岳名
針ノ木小屋泊 ▲針ノ木岳2820m
9/03 △針ノ木小屋発 ▲蓮華岳2536m ▲北葛岳2551m ▲七倉岳2509m
9/04 △舟窪小屋出発 ▲船窪岳2459m ▲不動岳2601m ▲烏帽子2628m
9/07 △双六小屋出発 ▲樅沢岳2755m ▲佐俣岳2674m ▲槍ヶ岳3180m
9/08 △殺生ヒュッテ ▲東鎌尾根縦走 ▲西岳2758m ▲喜作新道縦走
9/09 △大天井ヒュッテ ▲大天井2922m ▲表銀座縦走
9/10 △燕山荘出発 ▲燕岳2762m ▲合戦尾根下山
中房温泉下山
■2013年9月2日 ≪扇沢1433m⇒鉢ノ木小屋2561m⇔鉢ノ木岳2820m≫ 累計標高:1387m/所要時間:8.14H