「恋い焦がれ 歳を重ねし 山桜 一句とわれも 道に遊ぶや」 實久
(こいこがれ としをかさねし やまざくら いっくとわれも みちにあそぶや)
1.深川⇒日光⇒白川 <奥の細道紀行1>
① 【深川・ふかがわ】
「深川や 濁さず発ちし 二羽の鷺」 (ふかがわの にごさずたちし にわのさぎ) 實久
「孤の庵 しばしの別れ 月ぞ棲む」 (このいおり しばしのわかれ つきぞすむ) 實久
「春霞 別れも辛き 三度笠」 (はるがすみ わかれもつらき さんどかさ) 實久
「振り返る 千住恋し 牡丹哉」 (ふりかえる せんじゅうこいし ぼたんかな) 實久
「陽炎や 恋い焦がれつつ 浮き沈み」 (かげろうや こいこがれつつ うきしずみ) 實久
② 【日光・にっこう】
「光り絶つ 裏見の滝や 芽吹き哉」 (ひかりたつ うらみのたきや めぶきかな) 實久
「風莢か 翁の句碑や 夏初め」 (かぜさやか おきなのくひや なつはじめ) 實久
「あの世へと 夏弾きしや うらみ滝」 (あのよえと なつはじきしや うらみだき) 實久
「杜の海 緑波打つ 日の光」 (もりのうみ みどりなみうつ ひのひかり) 實久
「黒髪に さすらう人や 月朧」 (くろかみに さすらうひとや つきおぼろ) 實久
③ 【黒羽・くろばね】
「夏の野や 鐘の音抱きて 臥せしわれ」 (なつののや かねのねだきて ふせしわれ) 實久
「白き花 おのれ隠さじ 山法師」 (しろきはな おのれをかくさじ やまぼうし) 實久
「峰々の 行者行き交ふ 夏の役」 (みねふかし ぎょうじゃゆきかふ なつのえん) 實久
「山桜 風吹き去るも 物見かな」 (やまざくら かぜふきさるも ものみかな) 實久
④ 【芦野の里・あしののさと】 (遊行柳-歌枕)
「道野辺の 柳眠たき 彼の日かな」 (みちのべの やなぎねむたき かのひかな) 實久
「歌枕 柳も旅す 今昔」 (うたまくら やなぎもたびす いまむかし) 實久
「山鳩も 愛でる仕草や 柳腰」 (やまばとも めでるしぐさや やなぎこし) 實久
「怨霊の 生死またがる 夏の石」 (おんりょうの しょうじまたがる なつのいし) 實久
「目覚めるに 鐘打ちたまう ほととぎす」 (めざめるに かねうちたまう ほととぎす) 實久
2.白河 ⇒ 飯坂 <奥の細道紀行 2>
⑤ 【白河の関・しらかわのせき】
「踏越えし 陸奥峠 朧月」 (ふみこえし みちのくとうげ おぼろつき) 實久
「足りなさや 花に恥入る 都人」 (たりなさや はなにはじいる みやこびと) 實久
⑥ 【須賀川・すかがわ】
「時経るや 流れ去らしむ 夏の雲」 (ときへるや ながれさらしむ なつのくも) 實久
「翠なる 桜も遅く 隠れしや」 (みどりなる さくらもおそく かくれしや) 實久
⑦ 【飯坂温泉・いいざかおんせん】
「弁慶の 笈朽ちたるも 都草」 (べんけいの おいくちたるも みやこくさ) 實久
「摺上の 川釣り鮎や 足るを知り」 (ずりかみの かわづりあゆや たるをしり) 實久